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あの部屋
【美月 side】
背中があったかい。
ぼく、横向きで、後ろから麗彪 さんにぎゅってされて、寝てた。
麗彪さんの右腕を枕にして、麗彪さんの左腕はぼくのお腹のとこにあって。
ぼくの左手は麗彪さんの左手の上なんだけど、右手が・・・ベッドのはしっこで、なにか掴んで・・・掴まれてる・・・?
「ぁ、新名 さんてば、こんなとこで寝ちゃったの?かぜひいちゃうよ?」
僕の右手を掴んでたの、新名さんだった。
ベッドの横に座ったまま寝ちゃってる。
麗彪さんも、ぜんぜん起きなそおだから、そおっとベッドから出て、新名さんに毛布かけてあげた。
時計見たら、夜中の3時。
昨日はぱぱが送ってくれたお酒を誰がいっぱい飲めるか競争してたみたい。
最初にギブアップしたのは駿河 さん。
次は片桐 さん、その次はカンナさん。
その後どおなったんだろ。
ぼくは12時くらいまで起きてたんだけど、麗彪さんと新名さんと時任 さんはまだ頑張ってたみたいだった。
ぼくが麗彪さんの膝上で寝ちゃった後も、まだお酒飲んでたのかな。
おトイレに行って、リビング見に行ってみる。
駿河さんは床で、カンナさんと片桐さんはソファで寝てる。
3人には、ぼくが寝る前に毛布かけといたんだけど、片桐さんのが落ちちゃってたからかけなおした。
あれ、時任さんがいない・・・?
ちゃんと、自分のお部屋で寝たのかな?
だったらいいけど・・・。
「美月?起きたのか?」
「あっ、時任さん?寝てなかったの?」
時任さん、いた。
電気点けてないからわかんなかったけど、ダイニングテーブルで・・・え、まだお酒飲んでるの?
「お酒いっぱい飲む競争、時任さんが勝ったんだね」
「ああ。美月も飲むか?」
「えっ?いいの?」
「ホットミルクな」
なんだ、お酒飲んでいいんじゃないんだ。
前に間違って、麗彪さんのお酒飲んじゃった事あったな。
よく覚えてないけど。
「お酒は大人になったらって、麗彪さん言ってたけど、何才で大人なの?」
「18」
「あと2年・・・」
時任さんが、はちみつ入りのホットミルクを作ってくれた。
あったか甘くて、おいしい。
お酒って、これよりおいしいのかな?
「時任さん、まだ寝ないの?」
「・・・いや、美月がそれ飲み終わったら、俺も寝る」
「どおして、暗くして、ひとりでお酒飲んでたの?」
「・・・なんとなく」
みんなが寝てるから、リビングの電気消すのはわかるけど、ダイニングの電気は点けててもいいんじゃない?
暗いとこにひとりだと、寒くて、さみしくなるでしょ?
「ひとりで、暗いとこいるの、よくないよ。ぼくは嫌だった。時任さんが、あんな気持ちになってたらやだ」
麗彪さんたちといっしょにいて、ずっと忘れてた。
おかあさんと住んでた、あの部屋。
おかあさんが出かけると、ひとりで、暗くて、寒くて、痛くて、終わらなくて・・・。
1分が1時間くらいに感じる、そんな部屋だった。
「わかった、今度からはちゃんと電気点けて飲む」
「うんっ」
ホットミルク飲み終わって、ベッドに戻る事にした。
時任さんは、床で寝ちゃってる駿河さんを引っ張って起こして、肩に乗っけて持ち上げちゃう。
駿河さんが「ぅぐ」って声出したけど、そのまま駿河さんのお部屋に運ばれてった。
「時任さん、おやすみなさい」
「おやすみ、美月」
ベッドに入ろうとしたら、麗彪さんと新名さんの手が、ベッドの上うろうろしてる。
何してるの?
あ、なんか探してる?
何だろ・・・。
「・・・みつきぃ?」
「うん?いるよ、おトイレ行って・・・わっ」
麗彪さんに引っ張られて、起きる前と同じ状態になった。
麗彪さんの手は落ち着いたけど、新名さんの手がまだうろうろ・・・。
あれ、もしかして・・・。
「・・・やっぱり」
ぼくが右手を伸ばしたら、新名さんが見つけて掴んだ。
ぼくの手探してたんだね。
置いてってごめんね。
あ、そおだ、次からは麗彪さんと新名さんの手をつないでから、おトイレ行こっと。
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