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ご主人さま

麗彪(よしとら)side】 午後イチの会議を終え、時任(ときとう)の運転で帰宅した。 マンションには美月(みつき)と、何のだか知らないが準備があると言って残った駿河(するが)、相変わらず美月の側を離れたがらない新名(にいな)がいる。 「ただいま・・・美月?」 いつもならすぐ出迎えてくれる美月が来ない。 まさか、何かあったのか・・・。 「ぉ、お帰りなさいませ、ご主人さまっ」 「・・・え・・・み、つき?」 現れたのは、黒い猫耳としっぽが生えた、メイド姿の美月だった。 「まじか・・・可愛い過ぎるだろ・・・てか、おい、まさか新名が着替えさせたんじゃないだろうな」 「ご安心ください、ご許可いただいていないので駿河が担当いたしました。その代わり、衣装のチョイスは俺です」 「よし」 美月に続いて現れた新名が報告してきた。 いや、何がよしなんだ俺。 だが、この衣装は悪くない。 猫耳もいい。 「麗彪さ・・・ご主人さま、お気にめしましたか?」 「ああ凄く」 ご主人様呼びも悪くない。 俺の前でくるりと回って見せてくれる美月。 膝丈スカートの裾がひらりと舞って、タイツでなくニーハイソックスを穿いている事がわかった。 似合い過ぎだろ。 「ご主人さま、こちらへどおぞ。お着替えのお手伝いをいたしますっ」 「ああ頼む」 可愛いメイドのふりふり揺れるしっぽを追いかけて寝室へ入った。 まず、スーツのジャケットとベストを慣れない手つきで脱がせてくれる。 身長差もあってネクタイを外すのに手こずっていたから、ベッドに腰掛けた俺の膝上を跨ぐ様に座らせて、外してもらった。 「下も脱がせてくれんのか?」 「はいっ、ご主人さま立って?ベルト外しますね・・・」 美月の華奢な指が、俺のベルトにかかる。 やべーな、このままだと俺が我慢できなくなりそうだ。 「待った。この後もなんか用意してくれてるか?」 「えと、ぼくが作ったレアチーズケーキをご用意してますっ」 だとしたら、お着替えプレイはこの辺で切り上げよう。 「後は自分で脱ぐから、着る服用意してくれるか?」 「はぁいっ」 チェストを開け、黒いスウェットの上下を取り出す猫メイド。 因みに、あのスウェットは美月のお気に入りでもある。 「こちらにお着替えしてくださいっ」 「了解」 「あっ、シャツくださいっ!」 「メイド服の上から着るつもりか?もったいないから今はだめだ」 これは事後に着てもらおう。 メイド美月に手を引かれ、リビングのソファに座る。 美月がキッチンに向かうと、駿河が耳打ちしてきた。 「本日のおやつは美月くんがひとりで作ったんですよ」 時任は俺が連れて行ったし、駿河に料理スキルはない。 新名はよく(さかき)家で美月のおやつを作っていたから、あいつが手伝ったのかと思っていたが・・・。 「新名にも、手伝いはいらないと美月くんが言ったんです。麗彪さんのために、自分で作りたいからって」 「なら全部俺が食っていいってことだな」 「ちょっとくらい分けてくださいよ〜」 美月が俺のために作ってくれたレアチーズケーキは、見た目も綺麗に出来ていて、最高に美味(うま)かった。 控え目だが甘く、なめらかで、普段そんなにケーキなんて食わない俺がホールの1/4を平らげるくらいに。 もちろん、猫メイドにあーんしてもらいながら。 美月は俺がそんなに食べると思っていなかったらしく、照れながら嬉しそうに笑った。 残りは時任がきっちり切り分けて、この部屋に出入りする全員に行き渡る事になった。 休みを取らせていたはずの片桐(かたぎり)も、誰に聞いたのかわざわざ食いに来たし。 「晩飯の前に、メイドさんに遊んでもらおうかな。寝室で」 「えっ・・・か、かしこまりました、ご主人さま・・・」 さてと、たっぷり遊んでもらおうかな。

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