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ポケットにカイロ

麗彪(よしとら)side】 ホテルに車を入れ、専用ラウンジでチェックインを済ませてランドへ向かう。 まだオープン前だがエントランス前で並んで待つらしい。 寒い中立って待つのは美月(みつき)にはキツいだろうと、駿河(するが)あたりを並ばせといてラウンジで待とうかと思ったんだが・・・。 「みんな開くの待ってるんだねっ!いっぱいいるねっ!ねえ麗彪さん、カチューシャどれにしよおっ!?」 美月のわくわくが止まらず、ラウンジでじっとしていられない様だったから結局全員で並んでいる。 オープンまであと30分くらいだが、割と前の方に並べてるのは、先に親父の手先どもが代わりに並んでいたからだ。 「お嬢、疲れたらいつでも抱っこしますから言ってくださいね」 新名(にいな)、それは俺の役目だ。 「みっちゃん、パパとチュロス食べよう」 親父のくせにチュロスなんて食うのか。 どの味食うんだ。 美月の好みはシナモンじゃなくチョコの方だぞ。 「このショーとアトラクションはバケパに付いてるから、入ったらスマホでこれのパス取りつつこっちのスタンバイ並んで・・・」 パーク内での動きは全面的にカンナに任せてある。 前もって美月が絶対乗りたいアトラクションはチェック済みだ。 「レストランの予約は19時ですからね〜。昼は何でも好きなの食べていいですよ〜」 晩飯はクリスマススペシャルコースだって言ってたな。 美月がキャラシェイプのスナックやチキンレッグを食べたがってたから、昼はあえてレストランの予約をしなかったのか。 「皆さん、入る時にボディチェックありますからね。変なモノ持ってきてないですよね?」 片桐(かたぎり)、それ、お前が一番心配なんだが。 荷物と言っても、駿河と時任(ときとう)、カンナが各々持ってるボディバッグだけで、俺たちは携帯くらいしか持ってない。 駿河のバッグには現金、カンナのは常備薬と救急セット、時任のは・・・あの中身は何だ・・・大丈夫か・・・? 「美月、麗彪さんの手を放すなよ。麗彪さんのコートのポケットにもカイロ入れてあるから、手繋いだまま入れていいぞ」 おい時任、いつの間に俺のポケットにカイロ仕込んだんだ。 まあいいか、美月と手を繋いだままポケットに突っ込んどこう。 そうすると、美月が嬉しそうにもう片方の手も突っ込んでくる。 可愛いかよ。 やたら目立つ8人組だが、周りもランドで遊ぶ事しか考えてないだろうし、こっちも今更周りの目を気にする事はない。 「美月、両手入れてたら歩けないぞ」 「ふふっ、前に進んだら出すよ!」 「お嬢、反対側の手は俺と繋ぎましょう。俺のポケットにもカイロ入れてありますよ」 「ああ゛?」 新名が美月と手を繋ぎたがり、絶対許さんと思ったが、当の美月が繋いでやりたそうな目で俺に訴えてくる。 なんでそんなクソ狐に甘いんだよ。 美月はヤツの事情を知らないのに。 「・・・ち、今日だけだぞ。優しい美月に感謝しろ」 「ありがとうございます!」 「えへへっ、両手あったかいっ!」 まあいいか、美月の両サイドをガード出来ると思えば。 チュロス食う時は新名側の手を放すだろうしな。
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