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運動音痴
【麗彪 side】
美月 はとても賢い。
何でもすぐ覚えて、感心してばかりだった。
・・・だが、しかし。
「お嬢、大丈夫ですか?無理しないでくださいっ」
「そうだぞ、あっちのにしよう、なあ、みっちゃん」
「・・・ぅぅ、もぉちょっと、がんばる・・・」
今日は榊 家の近くにある公園に来ている。
俺と美月と、新名 と親父で。
先ずは代表的な遊具であるブランコに美月を乗せてみたんだが、少し揺らしただけでぎゅっと固まってしまった。
「美月、ブランコ恐いんじゃないか?」
「・・・ぅぅ」
「公園に来たらブランコ乗らなきゃいけないなんて決まりはないんだぞ?」
「・・・ぅん」
ブランコ、恐いのか。
何がだめなんだろうな。
ブランコを諦めて滑り台に行き、新名と一緒に梯子を登る美月。
・・・新名、お前まで滑る必要ねぇだろ。
「じゃあ、一緒に滑りましょうね」
「うんっ」
あ、滑り台は大丈夫なんだな。
・・・クソ狐め、美月を膝に乗せてんじゃねぇよ蹴り飛ばすぞ。
「きゃーっ」
楽しそうだ。
もう一回やるらしい。
「みっちゃん、滑り台楽しいかい?」
「うんっ、楽しいっ!」
5回目を滑り終えた所で、次はシーソーに誘ってみた。
俺と美月、反対側に親父と新名。
笑える絵面だな。
「ひゃあっ」
俺が地面を蹴ってこっち側が浮くと、美月がまたぎゅっと固まって悲鳴を上げた。
・・・シーソーもだめか?
反対側の親父が地面を蹴って、こっち側ががくっと下がる。
「ひうっ」
あ、だめだなこれ。
美月を抱えてさっと降りると、案の定反対側の2人はがこんと下に落ちた。
「ぐっ・・・おい麗彪ぁ・・・」
「・・・麗彪さん・・・やっちゃだめなやつ・・・ですよ・・・」
親父と新名はしっかりダメージを食らったようだ。
「悪い、美月はシーソーも恐いみたいだ」
「ご、ごめんなさいっ。ぱぱ、新名さん、大丈夫?」
大丈夫だ美月、この程度じゃこいつらはなんともねぇよ。
次はジャングルジム。
俺がやって見せると、真似をして上がって来ようとしたが、どうも見ていて向いてなさそうだと思った。
・・・美月、運動神経が悪いんじゃ・・・。
「みっちゃん、そこまでにしな、落ちたら大変だ。麗彪 の真似なんてしなくていいよ」
「誰がサルだ」
大した高さでもないので飛び降りて、美月が降りるのを見守っていると、どうやら降りられなくなってるらしい。
・・・2段しか登ってないんだが。
「美月、抱っこするから手ぇ放していいぞ」
「・・・ぅ、うん」
さてと、次はどうするか・・・。
「お嬢、あれやってみます?」
「うんっ」
新名が勧めたのはターザンロープ。
・・・大丈夫か?
新名が先にやって見せて、どんな動きをするか説明をする。
足を掛けられる様になってるし、ロープさえ放さなければ大丈夫だとは思うが・・・。
「あっ」
「「「ぅわっ!」」」
「あはっ」
最後に止まる所で、美月の身体が宙に浮いた。
がくっとなった衝撃でロープから手を放してしまったらしい。
見守っていた俺たちは大慌てで受け止めたが、当の本人は楽しそうだ。
・・・やっぱり、美月は運動神経が悪いんだな。
「意外とまだ出来るもんだなあ」
美月が雲梯 の使い方を聞いてきたので、親父がやって見せる。
・・・サルはどっちだよ。
「ぼくもやるっ」
美月はジャンプして雲梯に掴まろうとしたが、案の定届かず、俺が抱き上げて掴まらせてやる。
「美月、片手を放して次の掴むんだぞ」
「・・・ぅ・・・ぅぅ・・・」
「・・・下りるか?」
「・・・はぃ」
どうやら、美月は運動音痴だ。
今まで運動らしい運動はさせてこなかったし、今度カンナに相談してみるか・・・。
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