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⭐︎番外編⭐︎駿河と美月
【駿河 side】
「美月 くん、俺とお買い物に行きましょう〜」
「はぁ〜い!」
雪が降る予報だったので、麗彪 さんが念の為家に居たいと言った。
だから仕事を持ち帰って来たんだけど、予報は見事に外れて晴天。
仕方ないので持って来た書類仕事はさせようとしたものの、うちの若様はどうしても美月くんに構ってしまい進まない。
やむを得ず、おやつの時間まで美月くんと外出するという強行手段に出る事にした。
美月くんを取り戻したいが為に、きっと仕事も捗る事でしょう。
「おい駿河、美月を連れて行くな」
「麗彪さんが仕事に集中しないからですよ〜。時任 は置いて行きますから、そっちに甘えてくださいね〜」
「麗彪さん、お仕事頑張ってね」
「・・・わかった。急いで終わらせるから早く帰って来てくれ」
「ふふっ」
玄関まで付いて来て、美月くんにマーキングし始める麗彪さん。
・・・まったく、美月くんの方がよっぽど大人ですね。
エレベーターで駐車場へ下りて、俺の車の助手席を開け美月くんを乗せる。
車が好きな美月くんの為に、最近また麗彪さんが車を買い替えた。
俺も・・・と思ったけど、美月くんはこの赤いAUDIを気に入っているらしいので、もっと気に入ってくれる車種が出るまで延期している。
「何を買いに行くの?」
「春物のコートと、新しい部屋着と・・・あとは色々見ていいのがあったら〜」
基本的には美月くんの服を買うつもりだけど、麗彪さんの部屋着も美月くんに選んでもらおう。
美月くんも着るから、着心地が良い物でないとだし。
「あれ、駿河さん、髪切った?」
「え?気が付きました?さすがですね〜。昨夜 ちょっと時任に切ってもらったんです〜」
美月くんの髪は、麗彪さんの趣味でセミロング。
前髪は目にかからない様、時任がこまめに切っている。
今日は風がないのでおろしていて、時任がアイロン使って毛先を少しくるっとさせていた。
「着きました。じゃ、手を繋いで行きましょうね〜」
「はぁ〜い」
平日で空 いているとは言え、念の為。
美月くんに掠 り傷でも負わせる訳にはいかない。
万が一、美月くんを失いでもしたら・・・俺が麗彪さんに殴られるだけでは済まない。
きっと、麗彪さん自身がだめになるだろう。
「あっ、あれかっこいい!」
「んー、麗彪さん用じゃなくて美月くんのコート見に来たんですけど・・・悪くないですね、買っちゃいましょうか〜」
基本的に、美月くんは物欲が無い。
欲しいと思う物があっても滅多に自分から主張しないので、何に興味を示しているか注意深く見て好みを把握し、俺たちが良いと思う物を買い与えまくっている。
買った物を見て、どうして欲しい物がわかったのかと驚きながら喜ぶ美月くんを見るのは楽しくて、俺以外もみんなそうだろうと思う。
「・・・あ、時任から連絡です。麗彪さん、ちゃんと仕事終わらせたみたいですよ〜」
「早いね!麗彪さん偉いっ」
「やれば出来るんだから、最初からやってくれればもっと偉いんですけどね〜」
美月くんの手を引いて、車へと向かう。
俺たちみたいなのでも、真っ直ぐ綺麗な瞳で見てくれる美月くん。
そんな彼と2人で過ごせる楽しい時間も終わりか。
ちょっと多めに書類持って来たつもりだったのに・・・麗彪さん、ほんとやれば出来るんだなあ・・・。
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