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反抗期とおかん
【麗彪 side】
昨夜 、美月 が久しぶりに分離不安を起こした。
泣きじゃくって、あやして、なんとか笑ってくれて・・・ぱたっと寝てしまったんだが・・・。
「美月」
「・・・ぅん」
「帰るから。ほら、着替えるぞ」
「・・・ぅん」
起きてはいる。
顔を洗って朝飯食って、歯も磨いたし。
だが、なぜか起きてからずっと機嫌がすこぶる悪い。
・・・あ、着替えを出したのに、今俺が脱いだスウェットを着たな。
「美月、そっちじゃない、こっち着ろ・・・」
「・・・これがいい」
「わかりました・・・」
なんでご機嫌斜めなんだ?
抱っこか?
抱っこすれば機嫌なおるのか?
「美月、抱っこするか?」
「・・・ぅん」
抱き上げて背中を摩 り、顔を覗き込む。
・・・怒ってんのか?
「どうした?なんか嫌な事あるのか?なおすから言ってくれ」
「・・・やじゃない」
「そっか・・・」
まさか・・・生理か?
「ほら、とらきち持てるか?」
「・・・ぅん」
連れて来ていたとらきちを拾い上げ、美月に持たせる。
部屋を出ると、新名 が待っていた。
「お嬢、機嫌直りました?」
「いや、絶賛反抗期中だ」
ちょっと庭に寄って、犬でも見せてみるか。
縁側に出ると、すぐに桜鬼 が駆け寄って来た。
「ほら美月、帰る前に桜鬼にバイバイしろ」
「・・・ぅん」
俺がしゃがむと、手を伸ばして桜鬼の頭を撫でる美月。
・・・にこりともしないんだが。
まじでどうした?
具合悪いのか?
「美月、どっか痛いとこあるのか?」
「・・・ない」
「そっか・・・」
痛くないなら生理じゃないな、なんて冗談言ってる場合じゃねぇ。
「みっちゃん、まだご機嫌斜めかい?」
今度は親父が様子を見にきた。
「ああ。桜鬼でもなおせなかった」
「そうか・・・年頃だしなあ」
まじで反抗期なのか?
美月が反抗期・・・いや、どうしたらいい?
美月がグレて家を出て行ったりしたら・・・。
「何やってんですか麗彪さん、行きますよ?」
朝飯の時に美月が不機嫌なのを見て、昨夜なんかしたのかと責めてきやがった時任 か。
そうだ、時任 なら、反抗期の対処法がわかるかもしれん。
「美月が反抗期なんだ」
「なに言ってんですか。昨夜の事が恥ずかしくなっただけですよ。美月、帰りたくないなら麗彪さんだけ先に帰るぞ?」
「ゃ、やだっ!ぼくも麗彪さんといっしょに帰るっ」
時任に言われて、ぱっと顔を上げた美月。
・・・え、昨夜の事が恥ずかしくなっただけ?
そうなのか?
「美月、もう怒ってない?」
「ぼく、最初から怒ってないよ」
「じゃあなんで機嫌悪かったんだ?」
「機嫌悪くないよ」
「・・・恥ずかしかっただけ、か?」
「・・・・・・ぅぅ・・・」
え、そうなの?
「「「さすが時任 」」」
俺と新名と親父で声を揃えてしまう。
それを見て、やっと美月が笑ってくれた。
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