156 / 300

お休みと旅行

美月(みつき)side】 いつも麗彪(よしとら)さんと寝てるベッドで起きたら、麗彪さんがいなかった。 でも、大丈夫。 だって、夜に麗彪さんがぼくを起こして、お仕事に行かなきゃいけなくなったって、言ってくれてたから。 朝ご飯の時に帰ってくるんだって。 ベッドから出て、洗面所で顔を洗って、リビングに行く。 「おはようございます、お嬢」 「おはよう、新名(にいな)さん」 ・・・あれ、新名さん、元気ない? 「麗彪さん、もうすぐ帰って来ますよ」 「うん」 「俺が朝ご飯作りました!一緒に食べましょう」 「はぁい」 いつもの、にこにこ新名さんだ。 元気ないって思ったけど、違ったみたい。 「美月くん、おはようございます〜」 「おはよ、駿河(するが)さん」 時任(ときとう)さんがいないけど、麗彪さんとお仕事行ったのかな。 朝ご飯は、トーストと、チーズ入りスクランブルエッグいっぱいと、ウインナーとスライストマト。 トーストにスライストマトとスクランブルエッグいっぱいのっけて食べるの、好き。 「・・・あ、ちょっと電話してきますね〜」 駿河さんのケータイに電話がきて、お話しに行った。 ・・・あれ、どおして玄関の外に出たんだろ。 「お嬢、たまごこぼれてますよ」 「んむっ?んんむっ」 のせ過ぎちゃったスクランブルエッグが、かじった反対側からこぼれちゃった。 「麗彪さんが帰ってきたら、俺(しばら)く仕事で帰って来れないかもです・・・帰って来たら、麗彪さんにお願いして、また一緒にコンビニデートしましょう!」 「うんっ!またいっぱいお菓子買って、肉まんとピザまんも食べよおね!」 「はいっ!」 新名さん、お仕事行っちゃうんだ・・・。 しばらく・・・って、どれくらいなんだろ。 1日? もしかして、もっと? 「ただいま、美月」 「麗彪さん、お帰りなさいっ!」 麗彪さんが、電話しに行ってた駿河さんといっしょに帰って来た。 ぼく、起きた時、ちゃんと泣かなかったよ? 「それじゃ、俺は行ってきます」 「ああ、全部綺麗にしてこい。ヤり方はお前の好きな様にしていい」 「はい」 全部、綺麗に? もしかして、新名さんはお掃除に行くの? でも、お掃除屋さんは、片桐(かたぎり)さんでしょ? 片桐さん、お休みなのかな。 そしたら、遊びに来てくれるよね? またいっしょに、森の大きい滑り台に行きたいな。 「麗彪さん、片桐さんはお休みなの?」 「・・・・・・ああ」 「遊びに来る?お泊まりするかな?」 「・・・片桐な、旅行に行ったんだ」 「旅行・・・?」 なんでだろ、麗彪さん、少し悲しそお。 片桐さんが旅行に行っちゃったから、寂しいのかな。 ぼくも、片桐さんいないの、寂しいよ。 「・・・麗彪さん?」 「・・・ん?」 「片桐さん、いつ帰ってくるの?」 「・・・・・・すぐ、帰って来る。帰って来なきゃ、困る」 麗彪さんが、ぼくを抱っこして、悲しそおに笑った。 どおして、そんな顔するの? 片桐さん、そんなに遠くに旅行に行っちゃった? ・・・大丈夫。 大丈夫だよ。 片桐さん、きっとすぐ、帰って来てくれるから。 麗彪さんをぎゅってして、ぼくがいつもしてもらってるみたいに、麗彪さんの背中を撫でた。 大丈夫・・・大丈夫だからね。

ともだちにシェアしよう!