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大丈夫

麗彪(よしとら)side】 夜中に連絡があり、榊家(うち)で使っている病院へ向かった。 片桐(かたぎり)()たれて、手術を受けているらしい。 美月(みつき)には仕事に行くと伝え、駿河(するが)新名(にいな)を付けておいた。 病院に着くと、まだ手術中だという。 カンナの話では、助かるかどうかは五分五分(ごぶごぶ)。 ・・・くそが、なにやってんだ。 美月になんて言わせるつもりだ。 死ぬんじゃねぇぞ・・・。 「片桐さん、いつ帰ってくるの?」 手術が終わり、片桐の意識は戻らないままだったが、朝には戻ると美月に言ってあったので帰宅した。 美月には、とりあえず、片桐は旅行に行ったと伝えたが、気付かれてしまいそうな気がして恐い。 誤魔化そうと必死になる程、上手(うま)く笑えなくなる。 美月を抱き上げて、落ち着かせようと・・・いや、自分が落ち着こうとしていたのかもしれない。 「大丈夫だよ、麗彪さん。大丈夫」 「・・・美月?」 俺にぎゅっと抱き付いて、背中を優しく(さす)ってくれる美月。 本当に優しい。 こんな優しい美月に懐かれてんだ、片桐は大丈夫。 「なあ、美月」 「なあに?」 「・・・いや。片桐が無事に帰ってくるように、祈っててやってくれ」 「うん、わかった」 片桐を撃ったのはタチの悪い半グレどもだった。 前にも絡まれて、片桐が蹴散らしたんだが、ガキだったからって生かしてやったらしい。 それが、命を取られなかった事を感謝するどころか、報復だと? 脳みそ入ってなかったのか? 時任(ときとう)にクズどもを追い立てさせ、新名に狩って来るよう命じた。 1匹残さず消してくれるだろう。 新名の()り方は片桐と違って凄惨だ。 苦痛と生への希望を与え、最期にどうしようも無い絶望を自分の目で見せてから殺す。 絶対に美月には見せられないし、新名(あいつ)も見られたくないだろう。 まあ、美月に会ってからはそんな()り方はしてないみたいだが、今回は美月が懐いてる片桐のためだし、ヤバい新名で行くだろうな。 「麗彪さん、少し寝た方がいいですよ〜。美月くんは俺と遊んでますから。ね〜」 「はい。麗彪さん、夜ずっとお仕事だったんでしょ?お昼ご飯まで寝て?」 確かに寝てない。 でも、寝る気にもなれな・・・。 「ひとりでベッドで寝るの寂しい?ソファで寝る?ぼくのブランケットかけてあげる。麗彪さんの近くで、静かに遊ぶから、ね?寝よ?」 美月に寝かし付けられて、ソファに横になった。 時任と新名には悪いが、美月を安心させるためだ、許せよ。

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