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見つかる前に

美月(みつき)side】 「おーき、どこぉ?」 今日もぱぱのお(うち)でかくれんぼ。 お庭で、ぼくと桜鬼(おうき)の2人でだけど。 麗彪(よしとら)さんはぱぱたちとお仕事に行っちゃった。 お留守番はぼくと、新名(にいな)さんと、片桐(かたぎり)さん。 お庭の端っこまで来たけど、ここにも桜鬼はいなくて、反対側かなって思って振り返ったら・・・。 「おいお前、こんなとこでなにしてんだ?犬どもに食われちまうぞ!」 「ふぇ?えっと、だれ・・・?」 なんか、耳とかまゆげとかにキラキラしたの着けた、ちょっと恐そうなお兄さん。 初めて会う人だ。 「ったく、どっから入ってきたんだよ?近所のガキか?ほら来い、見つかる前に逃してやるから」 「逃す?どおして?」 「お前みたいなのが入ってきちゃマズイとこなんだよ!いいから黙って来い!」 お兄さんに腕を掴まれて、お庭の端っこ沿いを歩く。 どこ行くんだろ・・・。 「待て浩太(こうた)!何やってんだ!」 あっ、藤堂(とうどう)さんだ。 藤堂さんもお留守番組だったんだね。 こうた・・・って、このお兄さんの事かな? 「えっ?と、藤堂さん?いや、こいつは違うんです!すぐ外に連れて行きますから勘弁してやって・・・」 「馬鹿野郎、お嬢は若の嫁だ!お前が連れまわしていいような方じゃねえよ!」 「・・・ええ!?」 こうたさんは、びっくりして僕の腕を放した。 「お嬢、怪我はないですか?すいません乱暴なやつで」 「大丈夫だよ。見つかる前に逃してくれるんだって・・・あっ、桜鬼!藤堂さんと遊んでたの?」 藤堂さんの後ろから桜鬼が出てきて、ぼくに飛び付く。 倒れそうになっちゃったけど、誰かがぼくの後ろにいて助けてくれた。 「桜鬼、美月くんに飛び付くなと言ってるでしょう」 「片桐さん?ありがと」 助けてくれたの、片桐さんだった。 藤堂さんが、こうたさんの頭を手で押して、いっしょにお辞儀してる。 どおしたの? 「すいませんお嬢!片桐さん、自分の教育不足です。浩太(こいつ)は今日初めてここに連れてきたんで・・・」 「そうですか。とりあえず、麗彪さんが帰ってきてからにしましょう。それまでは待機で。彼を咎めないでくださいね、美月くんが心配しますから」 とがめないで・・・怒らないであげてって事だよね? 片桐さん優しいから、怒ったりしないよ。 それに、こうたさんはぼくが見つからないよおにしてくれただけだから、悪い事なんてしてないもん。 「美月くん、そろそろお昼ご飯の時間ですよ。中に入りましょう」 「はぁい。藤堂さんとこうたさんも、いっしょに行こ?」 「いえ、自分たちは庭の掃除があるんで、お嬢は先に行ってください」 藤堂さんがにこって笑って言った。 ・・・藤堂さん、おっきくてクマさんみたい。 こうたさんは・・・なんか具合悪そう・・・大丈夫かな。 「こうたさん、大丈夫?」 「だっ!大丈夫ですっ!すみませんでしたっ!」 ・・・そお? 大丈夫なら、いいけど。 藤堂さんがいっしょだし、藤堂さんも優しいから、こうたさんの事は任せちゃお。 ぼくは片桐さんと手を繋いで、新名さんが作ってくれたお昼を食べに、お家の中へ入った。

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