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夢と現実

美月(みつき)side】 痛い。 寒い。 暗い。 お腹、空いた。 なんで? ここ、どこ? お(うち)・・・あ、そおだ、おうちだ。 なんじだろ。 はやく、立たなきゃ。 立って、おそうじ、しなきゃ。 おかあさん、かえってきちゃう。 でも、足いたい。 おかあさんが、おでかけするとき、ぼくがじゃまなとこいたから、ぶつかっちゃって。 ころんだぼくの足、おかあさんが、ふんじゃったんだ。 かたっぽの足でなら、立てるかな。 あれ、ぼく、げーしちゃったみたい。 いたかったからかな。 どおしよ、はやくおそうじしなきゃ。 かえってきちゃう。 どあがあく。 おかあさんが、かえってくる・・・。 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! すぐきれいにするから! かってにしゃべらないから! はじっこに立ってじゃましないから! おねがい!! 「───────っ!!」 「美月!?大丈夫だ、ただの夢だから。大丈夫、俺がいる。もう恐くないからな」 ・・・あったかい。 ・・・いいにおい。 麗彪(よしとら)さんの、におい。 ぼく、麗彪さんに、ぎゅってされてる。 「・・・ょしとら、さん・・・?」 「ああ」 「ぼく・・・あし・・・」 「足?痛いのか?どっちだ?両方か?」 いたい・・・痛く、ない。 あれ、夢、だった? ほんとにあった事だけど、今のは夢だったんだ。 だって、あのおうちじゃなくて、麗彪さんのお家の、ベッドにいるんだもん。 「だいじょぶ、もぉ、痛くないよ」 「でも痛かったんだろ?ぶつけたのか?痣になってるかも・・・」 「ずっと前だから、もぉ大丈夫」 「・・・・・・そうか。目ぇ覚めちゃったよな。なんか飲むか」 麗彪さんが、ぼくを抱っこしてベッドを下りた。 よかった、あれが夢で、麗彪さんが現実で。 「ホットミルクに蜂蜜入れんのと、ココア、どっちがいい?」 「はちみつ」 「蜂蜜飲むんじゃなくて、蜂蜜入れたホットミルクな」 2つのマグカップに牛乳を入れて、ラップをして電子レンジであっためてくれる麗彪さん。 チンってなったら出して、ラップを外してはちみつを垂らして、スプーンでかき混ぜる。 ダイニングテーブルにカップを置いて、僕を抱っこしたままイスに座った。 「まだちょっと熱いな」 「ちゃんとふーふーする」 「いや、カップの持ち手があちい」 「あちい・・・ふふっ」 麗彪さんはとっても優しい。 ぼくが熱いの持たないように、気を付けてくれる。 痛いのもないように、ずっと気を付けてくれた。 なんであんな夢、見たんだろ。 忘れてたはずなのに。 どおして、思い出しちゃったんだろ。 また、あのおうちに、戻ったりしないよね・・・? 「美月?もう持っても大丈夫だぞ」 「・・・ぁ、うん、ありがと」 あったかくて、甘くて、優しいホットミルク。 ぼくは、もお、大丈夫。 麗彪さんといっしょだから。 これからも、ずっと・・・いっしょだよね・・・。

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