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寝かし付け

麗彪(よしとら)side】 俺は、美月(みつき)に関して変態である事を認めている。 美月が何しても可愛いくて、とにかく可愛くて、ひたすら可愛くて、(たま)らない。 そうやって、可愛い美月を愛でているばかりだったのに、今回は違ったんだ。 美月が俺を「うちの夫」と言ってくれた。 呼びに来てくれたのかと思ったら、あっさり俺を置いて行こうとして、慌てて縋り付いてしまった。 俺を「甘えんぼさん」と言って、手を引いて連れて帰ってくれた。 いつもとは、まるで逆の立場になった様で・・・。 「・・・まじで惚れ直したっ!」 「何故それを俺に話すんです?」 新名(にいな)よ、お前がその場に居なかったからだ。 美月の新たな一面をお前にも共有してやってるんだろうが。 「お嬢はいつだって、凛として立派なお嬢ですよ。俺たちが恐れている闇も不安も、一瞬で消し去ってくれる絶対的な光です」 「そうだな。美月は天使であり妖精でありお姫様だ。でも・・・女神とか、もしかしたら女王様にもなれるのかもしれない!」 「女神は確かにその要素も持っていると思いますわかります!ですが女王様は麗彪さんの願望でしょう!?」 「こら、麗彪さんも新名も(うるさ)いですよ。美月くんが起きてしまいます」 片桐(かたぎり)に叱られ、声のトーンを落とした。 パーティーから帰り、美月と風呂に入ってから膝上に抱いて寝かし付けつつ、新名と酒を飲んでいる。 パーティーで見せた、美月の新たな一面を自慢したくて。 美月は膝上で寝かせると、普通に喋ってても意外と起きない。 ベッドに下ろすとぱちっと起きたりするが。 だから今も、俺のスウェットを控えめに掴んだまま、良く寝ている。 「眠りが深いんだか浅いんだか、不思議なんだよな」 「言いたくないですが、麗彪さんと密着してるから、ちょっと騒いだくらいでは起きないんだと思いますよ」 「なんで言いたくないんだ?」 そうか、俺にくっ付いてるから、安心出来てんのか・・・。 ベッドに下ろすと同時に起きんのは、俺が離れるから・・・。 どんだけ可愛いんだよ。 「無意識下でも俺に依存してんのかな・・・最高だな・・・」 「麗彪さんじゃなかったら殴ってますけどね」 「いいぞ新名、俺じゃなかったら再起不能にしろ。美月の見てないところで」 「わかってます」 まあ、俺じゃなくても許せるやつらはいるんだが。 俺もそろそろ、親父の仕事を回され始めて忙しくなってくるだろうし、今から慣らしておく必要もあるかもしれない。 「美月の寝かし付けだが、俺が出来ない時はお前もやっていいぞ」 「・・・本当、ですか?じゃあ今すぐお嬢をこちらへ!」 「俺が出来ない時だっつってんだろ。あと、片桐もな」 「わかりました」 駿河(するが)時任(ときとう)、カンナにも任せていい。 ・・・環流(めぐる)はまだ早ぇな。 「だが親父はだめだ」 「一番()られる可能性の高い相手ですもんね」 美月、なんであんなバケモンに懐くんだ・・・。 頼むから、俺の敵わない相手に乗り替えんのだけはやめてくれ・・・。

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