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苦しい事も悲しい事も

美月(みつき)side】 この頃、麗彪(よしとら)さんは忙しそう。 ぱぱのお仕事をお手伝いしてるんだって。 ぼくも、お手伝いできたらいいのに。 「麗彪さん」 「ん?」 お仕事から帰ってきた麗彪さんと、お風呂に入ってる。 今日はいっしょに寝られるって。 「ぼく、お手伝いできる事、ある?」 「美月がいてくれるだけで俺は助かってる」 「・・・そお?」 ぼく、いるだけじゃ役になんて立ててないよ。 ぼくにもできるお仕事って、ないのかな。 「最近少し忙しかったけど、落ち着いたから。明日から休みだし、2人でどっか行こう」 「ほんと?・・・でも、麗彪さん疲れてるのに・・・」 「だから癒して欲しい。美月と2人きりで、誰にも邪魔されない場所に行きたい」 「そっか、わかった!」 ぼく、頑張って麗彪さんの事、いっぱい癒す! でも、誰にもじゃまされない場所って? 「明日車で出かけて、ちょっと遠いとこのホテルにお泊まりしよう。美月を独り占めさせてくれ」 「うんっ!」 麗彪さんと2人きりでお泊まり、嬉しい! ・・・あっ、でも、嬉しいだけじゃだめだ。 麗彪さんを癒してあげなきゃ。 でも、癒すって、どうするの? お風呂から出て、着替えてから、辞書で調べてみる。 癒す・・・傷や病気などを直すこと、苦しみや悲しみなどを和らげること・・・。 傷や病気・・・じゃない、よね? どこもケガしてないよね? 「ん?どうした?」 「ちょっと確認」 ベッドに入って、麗彪さんのお洋服ちょっとめくってみたけど、どこもケガしてない。 ・・・あ、さっきお風呂でも見たんだった。 うん、大丈夫。 「なんの?」 「頭痛い?お腹は?」 「どこも痛くねぇよ?美月は?」 「ぼくも大丈夫」 じゃあ、苦しみや悲しみを和らげればいい? 麗彪さんの、苦しみや悲しみって? 考えてたら、麗彪さんがぼくをぎゅってしたまま、寝っ転がった。 「麗彪さん」 「ん?」 「苦しい事とか、悲しい事、ある?」 「また恐い夢見たのか?」 「ぼくじゃなくて、麗彪さんは?」 麗彪さん、僕の背中撫でながら、考えてるみたい。 なんだろう、麗彪さんの苦しい事、悲しい事・・・。 「美月が居れば、苦しい事も悲しい事もねぇな」 「・・・そう?」 「美月が居ないと、苦しくて悲しくて生きてんの嫌になるけど」 えっ・・・そ、そおなの? そしたら、お仕事してる時、ぼくいなくて、苦しくて、悲しい・・・? 生きてるの、いや・・・? 「だめぇ・・・麗彪さん、生きててくれなきゃ・・・」 「泣くな泣くな。帰れば美月が居るんだから、絶対生きて帰るって」 「ほんとぉ?」 「本当」 麗彪さんが、キスしてから、ぎゅーってしてくれる。 ぎゅーってされるの、好き。 麗彪さんしか見えなくて、麗彪さんの匂いしかしなくて、ぼくの世界が麗彪さんだけになったみたいだから。 幸せで、恐いも苦しいも悲しいも寂しいも、悪いのは全部なくなるんだ。 「・・・っ、これするっ!」 「ん?どれ?」 お泊まりして、2人きりになったら、ぼくが麗彪さんをぎゅーってして閉じ込めちゃおう。 麗彪さんの世界、ぼくだけにするんだ。

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