173 / 300

⭐︎番外編⭐︎時任の寝かし付け

時任(ときとう)side】 「美月(みつき)、寝るぞ」 「はぁい」 今夜の寝かし付け担当は俺だ。 麗彪(よしとら)さんは片桐(かたぎり)新名(にいな)を連れて、雅彪(まさとら)さんから振られた案件を片付けに行っている。 「駿河(するが)さん、おやすみなさい」 「おやすみなさ〜い」 駿河は徹夜担当。 持ち帰った仕事を片付けるつもりらしい。 「おい、コーヒー飲み過ぎるなよ。腹減ったらカップラーメンじゃなくて春雨スープを食え」 「は〜い」 この返事・・・こいつ、カップ焼きそば食う気だな。 隠しとくか。 「時任さん、なにしてるの?」 「夜食に向かない物を隠してる」 「そこ、駿河さんに見つかっちゃうよ。お部屋に持って行っちゃえば?」 「・・・天才か?」 カップ焼きそばを持ち、カップラーメンは美月に持たせて部屋へ。 俺は駿河と同室だ。 部屋の端と端に各々のベッドが置いてある。 駿河のベッドにカップ麺類を放り投げ、美月を自分のベッドに上げた。 「ねえねえ時任さん」 「ん?」 「まだ眠くない」 「いつも夜更かしし過ぎだ。大きくなれないぞ」 「えー、大きくなりたい」 「なら目を瞑れ」 仰向けで横になり、言われた通り素直に目を瞑った美月に布団をかけ、隣に横になる。 静かに呼吸しているが、寝てねえな。 口角が上がってきてる・・・。 「・・・んふふっ」 「なに笑ってんだ」 「眠くなくて、面白くなってきちゃった」 「なんでだよ」 布団の上から美月の腹辺りに手を置いて、寝ろ、と圧をかける。 物理的ではなく、精神的にだ。 「ねえねえ時任さん」 「ん?」 「子守歌って歌える?」 「歌えない」 「んふっ・・・ふへへっ」 まずい、笑いのスイッチが入ったな。 子守歌が歌えないってだけで、何が面白いんだ。 「ぼく、歌ってあげるぅ」 「おー」 「ねぇーんねぇーんー、ころぉー・・・ふふふっ」 自分で歌って自分で笑い出した。 困ったやつだな。 美月の背中の下に手を入れ、俺の方へ横向きにする。 そのまま背中をとんとんと軽く叩く。 「・・・ねぇ、時任さん」 「ん?」 「オカンって、おかあさんって意味なんだよね」 「・・・ああ」 オカアサンて単語、ウチでは禁止されてんだけどな。 「時任さんが、ぼくのおかあさんだったら良かった・・・」 「いいのか。毎晩9時に寝かすぞ」 「んふふっ、はやぁい」 俺は父親にはなれても、母親にはなれないんだが、たぶんそうゆう事じゃないんだろう。 俺が育ててたら、美月の希望通り片桐くらい大きくなってたかもしれないな。 ・・・いや、さすがにそこまでは無理か。 「ほら、笑ってないで寝ろって」 「んー、もっかい歌う」 「やめろ、また自爆する気か」 22時半にベッドに入ったのに、結局寝たのは日付が変わる頃になった。 俺のオカンレベルも、まだまだだな。

ともだちにシェアしよう!