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好き過ぎて
【美月 side】
「むずかしいぃ・・・っ」
「頑張れー、帰れなくなるぞー」
「ぅあーっ、麗彪 さんが重いからぁーっ」
「失礼だなぁ」
麗彪さんと、湖でボートに乗ってる。
麗彪さんが、湖の真ん中までこいできて、ぼくと交代したんだけど・・・。
オールでこぐの、難しい。
まっすぐ進まないんだもん。
「ねえ、麗彪さん」
「ん?」
「恐い事、考えちゃった・・・」
「なんだ?」
こいでて、思っちゃったんだけど・・・。
「オール、落としちゃったら、帰れないね・・・」
「・・・ああ。オール落としたら、ずーっとボートで生活しないといけなくなるな」
「おトイレどおするのっ!?」
「ぶはっ!」
麗彪さん、すごく笑ってる。
笑い事じゃないのに。
「でも・・・」
「ん?」
「麗彪さんといっしょだから、平気かなって思っちゃう」
麗彪さんが、笑うのやめて、ぼくの事引っ張った。
ぼくが麗彪さんの方に行って、ボートが揺れる。
「わっ、わあっ!ひっくり返っちゃうっ」
「美月が可愛いのが悪い」
ええ?
ぼくが悪いの?
引っ張った麗彪さんが悪いのに・・・。
「俺も、美月が一緒ならこのままずっとボートの上でも平気だ」
「ふふっ。・・・あ、でも、揺れるからボートの上じゃないとこにしよ?」
「そうだな。ここで美月とエッチしたら、ボートがひっくり返るしな」
「えっ・・・エッチできないからじゃなくてぇっ」
麗彪さん、また笑ってる。
元気、出たかな。
ぼく、ちゃんと麗彪さんを癒せてる?
「一緒に漕ぐか。俺が右のオール、美月が左のオールな」
「うん・・・あっ、えっ?なんで回っちゃうのぉ?」
いっしょにこいでるのに、ボートが左回りにくるくるしちゃう。
なんで・・・。
「・・・これ、麗彪さんの方が強いから?」
「よくわかったな」
「もおっ、麗彪さん、もっと弱くしてっ」
「はいはい」
麗彪さんが弱くしても、やっぱりボートは左に曲がって行っちゃう。
ぼく、弱すぎるのかな・・・。
こんなに頑張ってるのに・・・。
「ギブアップ?」
「まだ・・・がんば・・・りたいけどぉ・・・帰れなくなっちゃうから、ギブアップぅ・・・」
「ジムで体力作りしてんのにな。まあ、夜は少し頑張れるようになったか」
夜、ぼく頑張ってる?
なにを?
・・・・・・あ。
「ぼく、頑張れてる?麗彪さんも、気持ちい?」
「ああ。今夜も、最後まで頑張ってくれよ?」
麗彪さんが、隣に座ってるぼくを左手でぎゅって抱き寄せて、キスしてくれる。
ぼく、麗彪さんにぎゅってしたくて、両手で抱き付いちゃった。
「あっ!」
「どうした?」
「オール放しちゃった!」
「ああ、これ、ちゃんと落ちないようになってるから。安心して俺に抱き付いてろ」
え、オール、落ちないの?
ぼく、すごく心配してたのに・・・。
麗彪さん、嘘ついて・・・ない、か。
落ちたらって言ったけど、放したら落ちるって言ってなかったもんね・・・。
「なんか悔しい」
「俺の事が好き過ぎて?」
そおじゃなくて、麗彪さん嘘ついてないのに騙された気がして、だから悔しいって思ったんだけど・・・。
麗彪さんのカッコいい顔見たら、騙されてもいいかって思っちゃった・・・。
「ぼく・・・麗彪さんが好き過ぎて悔しいっ!」
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