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神棚とヤバいの方向性

麗彪(よしとら)side】 親父から「片付いた」とだけ連絡があった。 悪夢の方がどうなったか聞いてくるかと思ったのに、短い報告だけだった。 まさか、あのバケモンが女1人片付けたくらいで参ってんのか? 嘘だろ・・・と思ったが、それはそれで面白そうだと思い美月(みつき)も連れて見に来たんだが・・・。 「神棚を作る」 「はあ?」 玄関に迎えに来なかったのは、美月に合わせる顔がないんだろうと思った。 美月に、自分が誰を殺した(なにをした)のか気付かれるんじゃないかと恐れたんだろう、と。 あの親父が恐れるなんてな。 親父は家にいると美月に言ってあったから、顔を出さない親父を心配して美月が探しに行った。 暫くして、すっきりした顔で美月を抱いて親父が居間に現れた時は、さすが美月だと思ったんだが・・・。 何故、神棚を作るとか言い出した? 「今更神に祈っても救われねぇぞ」 「俺たちの神様は赦してくれるんだよ。なあ、みっちゃん」 「うん?ぱぱは悪くないよ」 ああ、榊家(うち)(まつ)るのは美月様か。 美月、ついに神様になっちまったな。 それにしても・・・。 「親父、もう救われたろ。美月を返せ」 「ええー、みっちゃん聞いた?麗彪がパパに意地悪を言うんだよ・・・パパ悲しいなあ」 「ぱぱっ、大丈夫だよ、麗彪さんは恐くないよ?」 美月、そんなやつを(いたわ)ってやる必要なんかないんだぞ。 そんな、膝上に座って頭を撫でてやるなんてサービスしなくていい。 俺にやれ! 「へえ、パパにも恐いものなんてあったんだ?教えてくれよ、今後に活かしたいから」 「おいおい、それ聞いてどうする気だ?よっちゃんは相変わらずいたずらっ子だなあ。思い出すよ、何度庭の穴を埋めた事か・・・」 「お庭の穴?」 親父め、美月に告げ口する気か。 ・・・まあ、落とし穴の話しくらいなら別にいいか。 「よっちゃんが小さい時な、せっちゃんとさっちゃんと3人で庭に落とし穴を掘ってたんだよ。しかも1度に5つ。全部見つけて埋めるまでに、パパが1回、片桐(かたぎり)が1回、(やなぎ)が3回落ちた」 柳は穴探しのために、庭を歩き回るよう親父に命令されたんだ。 さすがの俺たちも、柳には悪い事をしたと思っている。 「柳さん、大丈夫?ケガ、しなかった?」 「ええ、大丈夫でした」 飲み物と美月のおやつを持ってきた柳が笑顔で答える。 嘘だ。 1回目でケツに痣、2回目で捻挫(ねんざ)、3回目で肩を脱臼しただろ。 柳が自力で肩はめ治してんのを見て、落とし穴を掘るのをやめたんだ。 「柳、探知機扱いして悪かったな。本当に良くやった」 「いえ、お役に立てたなら何よりです」 親父からの、今更の労いの言葉に頭を下げる柳。 さすが、昔から何でもNoと言わずこなしてきただけはある。 こいつもまあまあヤバいやつなんだが・・・美月が少しずつ懐いてる気がするんだよな。 警戒対象に・・・。 「お嬢も、落とし穴を掘ってみますか?俺、落ちるの上手になったので、是非俺のために穴を・・・」 「帰るぞ美月!」 (こいつ)のヤバいの方向性はドの付くM方向だ。 本気で美月に近付けないようにしねぇとな・・・。

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