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飲みごろ
【美月 side】
「美月ぃー」
「はぁーい」
麗彪 さんが呼んでる。
キッチンで時任 さんのお手伝いしよおと思ったけど、麗彪さんのとこ、行ってあげなきゃ。
「どおしたの?」
「膝上 座ってろ」
麗彪さんは、この頃甘えんぼさんだ。
ぱぱのお仕事のお手伝いが忙しくて、帰ってこない日とかもあって、ぼくも寂しかったけど麗彪さんも寂しかったんだって。
だから、麗彪さんがお家 にいる時は、ずっとくっ付いてなきゃだめって。
「ごめんね、寂しかった?」
「・・・わかってんなら行くな」
「ふふっ」
リビングのソファに座ってる、ご機嫌ななめな麗彪さんの膝の上に跨って、麗彪さんをいい子いい子してあげる。
こうすると、麗彪さんは目をつぶって気持ちよさそおにしてから、ぼくにぎゅって抱き付いてくれる。
麗彪さん・・・ぼくより大きくて強くてカッコいいけど・・・かわいい!
「トラってネコ科だから、似てるのかな」
「んー?」
「んふふ、かわいいっ」
よしよし、いい子いい子・・・。
麗彪さんを撫でなでしてたら、時任さんが飲み物を持ってきて言った。
「大変だな美月、そんなデカいネコの世話なんて」
「えへ。かわいいから大丈夫っ」
「麗彪さんを可愛がれんの、美月だけだぞ」
そおかな・・・。
でも、ぼく以外に甘えんぼさんしないから、そうなのかも。
ぼくだけの、かわいい麗彪さん。
「ぼくだけ・・・麗彪さんをかわいがっていいの、ぼくだけだからね。いい?ぼく以外に甘えちゃだめだよ?」
「んー・・・美月以外いらない・・・」
「ふふっ」
・・・でも、そろそろ放してほしいな。
だって、時任さんが持ってきてくれたアップルティーがいいにおいだから。
飲みたい・・・。
「・・・おい、なに離れようとしてんだ?」
「アップルティー飲みたい・・・」
「まだ熱くて美月は飲めない。飲み頃になったら放してやる」
どおして、ぼくが飲める温度がわかるんだろ。
熱い飲み物の時はいつも、麗彪さんが飲みごろ教えてくれて、間違ってた事もないんだよね。
「麗彪さん、かわいくて賢くて、いい子だね」
「・・・もっと褒めてくれ」
「カッコよくて、優しくて、ぎゅってしてくれて・・・大好きっ」
「俺も美月が大好きだ」
それから、いっぱいキスしてくれて、ぼく嬉しくて。
トラもネコみたいにゴロゴロ言うなら、きっと麗彪さんもゴロゴロ言ってるのかなって思いながら、ずーっとくっ付いてた。
「ねえ、麗彪さん」
「んー?」
「アップルティー、冷めちゃってない?」
「・・・俺が飲む。美月のは時任が淹れなおしてるから、それが飲み頃になるまでこのままな」
「もおっ・・・しょーがないなぁ」
ぼくも、ゴロゴロ言っちゃいそおだよ・・・。
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