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息ができない

美月(みつき)side】 どおしよ。 こんな事になるなんて。 ここ、なに・・・? 出られない。 ちょっとだけ、中見てみよおって、思っただけなのに。 ちょっと進んだら、どっちから来たかわからなくなっちゃった。 入り口に戻ってるつもりだったのに、別の方に進んじゃったみたい。 「・・・っ」 麗彪(よしとら)さん、呼ばなきゃ。 出られなくなっちゃったって、言わなきゃ。 それなのに、声が出ない。 なんで声、出ないの? どっち向いても、泣きそうなぼくの顔が見える。 ここ、入ったら出られない場所なの? なんで、まわり全部、鏡なの? 遊園地、楽しかったのに、こんな恐い場所があるなんて。 麗彪さん・・・ぼくの事、探してるかな。 見つけてくれるよね。 でも、麗彪さんまでここに入っちゃったら、麗彪さんも出られなくなっちゃうかもしれない。 そんなのだめ。 麗彪さんだって、ここ恐いかもしれない。 出口、探さなきゃ。 自分で出なきゃ。 早く、麗彪さんのとこ、戻らなきゃ・・・。 「・・・っ・・・ぅぅ・・・ふぇ・・・っ」 泣いてちゃだめ、早く出なきゃ、麗彪さん・・・。 勝手に離れてごめんなさい。 外に出る時は手を繋ぐって約束してたのに、約束破ってごめんなさい。 麗彪さんに言わないで、知らないとこに入ってごめんなさい。 自分で出られなくてごめんなさい・・・。 「───っ!!」 麗彪さんの声! ぼくの事呼んでる! 返事しなきゃ! ここにいるよって言わなきゃ! 出て・・・声、出て・・・!! 「・・・っ、・・・ょしとらさんっ!」 声出た。 よかった。 麗彪さんって呼べた。 でも、ちゃんと聞こえたかな。 遠くて、聞こえなかったかも・・・。 「ここか!?美月っ!!」 「っ!・・・こ・・・ここぉっ・・・よしとらさぁん・・・っ」 探しに来てくれた。 こんな恐いとこまで。 出口、ないかもしれないのに。 どっち見ても、泣いてるぼくしか見えないのに・・・。 「動くなよ!そっち行くから!じっとしてろ!」 「・・・っん、・・・うんっ・・・ふぇぇ・・・よしとぁさ・・・っ」 一瞬、少し先に麗彪さんが見えて、走って行ったら鏡にぶつかった。 なんで? 麗彪さんだったのに! ここにいたのに! 「美月!動くな!危ないから!」 「でもっ、いたもんっ!麗彪さんいたのにぃっ!」 「わかってる!鏡に映ってるだけだ!いいから動かないで待ってろ!」 どおしよ・・・このままずっと、麗彪さんに会えなかったら。 鏡に映った麗彪さんじゃ、ぎゅってできないし、ぎゅってしてもらえない。 「うぇぇ・・・ひ・・・っ、ぅう・・・っ」 悲しくて寂しくて、涙が止まらなくなる。 息も苦しい・・・ぼく、麗彪さんがいなきゃ・・・。 「美月っ!!」 ぎゅって抱きしめられて、鏡じゃない、本物の麗彪さんが来てくれたってわかった。 麗彪さんのにおい・・・やっと息できる・・・。 「よし・・・とらさ・・・っ・・・ごめ・・・なさ・・・っ」 「良かった・・・無事で・・・ごめんな・・・目ぇ離して・・・っ」 麗彪さんは悪くないのに、どおして麗彪さんが謝るの? 勝手にここに入って、出られなくなったぼくが悪いのに。 こんな恐いとこまで、助けに来てくれたのに。 「よ・・・っ、よし、とらさんっ・・・助け・・・っ、ありが・・・っ」 「ああ。恐い思いさせてごめんな。もう大丈夫だ。一緒に出ような」 麗彪さんに抱っこしてもらって、もう絶対麗彪さんと離れたくなくて、麗彪さんの首にぎゅうって抱き付いた。 死んじゃうかと思った。 ぼく、麗彪さんいないと、もう、息ができないよ・・・。

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