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捻挫の正しい処置
【麗彪 side】
「ああ、ミラーハウスだ。中にいた」
美月 を抱き上げたまま、とりあえず時任 に電話をする。
片桐 と新名 も連れて、すぐここまで来てくれるだろう。
「なあ美月」
「・・・ぅん?」
「ここ、ミラーハウスっていうんだ。鏡ばっかの迷路なんだけど・・・」
「めぃろ・・・よしとらさん・・・もしかして・・・?」
「・・・俺にとっては美月がゴールだから」
美月が俺の顔を見上げて、止まりかけていた涙を再び流し始めた。
まずい・・・。
「大丈夫だ、助けが来るから。こーゆうのは時任が得意だし、絶対出られる。それより、さっきどっかぶつけてただろ?痛くないか?」
「・・・ぅ・・・ぁの、ね・・・あし・・・痛い・・・」
やっぱりケガしたのか。
最悪だ・・・俺がちゃんと見てなかったから・・・。
「どこぶつけた?」
「うぅん、ぶつかったの、手。足、ぐにってしちゃった・・・」
捻 ったのか。
捻挫してるんだろう。
「手は?」
「ちょっと痛い・・・けど、大丈夫」
「美月!麗彪さん!」
時任 が来た。
野生の勘なのか、すぐに俺たちの所に辿り着いた時任の先導で、あっさり入り口から脱出成功する。
「お嬢!よかった・・・無事で・・・」
「美月くん、本当に見つかって良かった・・・」
「時任さん、新名さん、片桐さん・・・勝手にミラーハウス入って、ごめんなさぃ・・・」
反省しきりの美月をベンチに座らせて、足の状態を確認する。
右足は無事、左足首が痛むらしい。
そっと靴と靴下を脱がせ、時任が応急処置として水で絞ったタオルを巻いた。
「マンションにカンナを待機させてます。すぐ帰りましょう」
「ああ。美月、足動かすなよ?じっとしてろ」
「ぅん・・・」
再び美月を抱き上げ、遊園地を出て急いで車で帰宅する。
俺は美月を抱きっぱなしで、マンションの部屋に入りベッドに下ろすまで、放さなかった。
「これでよし。立ったり歩いたり、動かしたりしちゃだめよ?抱っこしてもらってね?」
「うん。ありがと、カンナさん」
カンナが捻挫に正しく処置するのを初めて見た。
本当はこんなに丁寧にするもんなのか。
それにしても、綺麗に包帯が巻かれた、美月の細い足首が痛々しい。
代わってやりたい・・・。
「麗彪くん、美月ちゃんは1週間絶対安静だから。・・・手ぇ出すなよ?」
「出す訳ねぇだろ」
幸い軽度らしく、とにかく安静にしていれば大丈夫だろうとの診断だった。
朝と晩に、カンナの診察を受ける事は必須だが。
「お嬢、何か飲みますか?」
「晩飯は何が食いたい?」
「足の下にクッションを置きますね」
俺同様、美月のケガに責任を感じている新名、時任、片桐が、美月の側から離れない。
散れ、とは言えなかった。
元凶は俺なのだから・・・。
「えっと、リンゴジュース飲みたい。夜ご飯・・・タルタルソースのやつ・・・」
「チキン南蛮?」
「チキンなんばん!」
食い物の話で、美月に笑顔が戻った。
さすが時任 。
「美月、ごめんな、ケガさせて・・・」
「どおして麗彪さんが謝るの?ぼくが悪いのに」
美月が悪い事なんてひとつもないんだぞ。
あったとしても、全部俺のせいにしていい。
そう言っても、美月は優しいから、俺を悪者にはしたがらないんだろうけど。
「美月の足が治るまで、俺がずっと世話するから。仕事も休む。ずっと傍にいる」
「・・・ほんと?いいの?・・・嬉しい!」
こんな事で喜んでくれんのか・・・可愛い・・・天使だ。
美月のためなら何だってするのに。
でも・・・俺はトイレの中でも世話するつもりだからな。
いつまで喜んでいてくれるか、少し心配だ。
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