186 / 300

捻挫の正しい処置

麗彪(よしとら)side】 「ああ、ミラーハウスだ。中にいた」 美月(みつき)を抱き上げたまま、とりあえず時任(ときとう)に電話をする。 片桐(かたぎり)新名(にいな)も連れて、すぐここまで来てくれるだろう。 「なあ美月」 「・・・ぅん?」 「ここ、ミラーハウスっていうんだ。鏡ばっかの迷路なんだけど・・・」 「めぃろ・・・よしとらさん・・・もしかして・・・?」 「・・・俺にとっては美月がゴールだから」 美月が俺の顔を見上げて、止まりかけていた涙を再び流し始めた。 まずい・・・。 「大丈夫だ、助けが来るから。こーゆうのは時任が得意だし、絶対出られる。それより、さっきどっかぶつけてただろ?痛くないか?」 「・・・ぅ・・・ぁの、ね・・・あし・・・痛い・・・」 やっぱりケガしたのか。 最悪だ・・・俺がちゃんと見てなかったから・・・。 「どこぶつけた?」 「うぅん、ぶつかったの、手。足、ぐにってしちゃった・・・」 (ひね)ったのか。 捻挫してるんだろう。 「手は?」 「ちょっと痛い・・・けど、大丈夫」 「美月!麗彪さん!」 時任(救助)が来た。 野生の勘なのか、すぐに俺たちの所に辿り着いた時任の先導で、あっさり入り口から脱出成功する。 「お嬢!よかった・・・無事で・・・」 「美月くん、本当に見つかって良かった・・・」 「時任さん、新名さん、片桐さん・・・勝手にミラーハウス入って、ごめんなさぃ・・・」 反省しきりの美月をベンチに座らせて、足の状態を確認する。 右足は無事、左足首が痛むらしい。 そっと靴と靴下を脱がせ、時任が応急処置として水で絞ったタオルを巻いた。 「マンションにカンナを待機させてます。すぐ帰りましょう」 「ああ。美月、足動かすなよ?じっとしてろ」 「ぅん・・・」 再び美月を抱き上げ、遊園地を出て急いで車で帰宅する。 俺は美月を抱きっぱなしで、マンションの部屋に入りベッドに下ろすまで、放さなかった。 「これでよし。立ったり歩いたり、動かしたりしちゃだめよ?抱っこしてもらってね?」 「うん。ありがと、カンナさん」 カンナが捻挫に正しく処置するのを初めて見た。 本当はこんなに丁寧にするもんなのか。 それにしても、綺麗に包帯が巻かれた、美月の細い足首が痛々しい。 代わってやりたい・・・。 「麗彪くん、美月ちゃんは1週間絶対安静だから。・・・手ぇ出すなよ?」 「出す訳ねぇだろ」 幸い軽度らしく、とにかく安静にしていれば大丈夫だろうとの診断だった。 朝と晩に、カンナの診察を受ける事は必須だが。 「お嬢、何か飲みますか?」 「晩飯は何が食いたい?」 「足の下にクッションを置きますね」 俺同様、美月のケガに責任を感じている新名、時任、片桐が、美月の側から離れない。 散れ、とは言えなかった。 元凶は俺なのだから・・・。 「えっと、リンゴジュース飲みたい。夜ご飯・・・タルタルソースのやつ・・・」 「チキン南蛮?」 「チキンなんばん!」 食い物の話で、美月に笑顔が戻った。 さすが時任(おかん)。 「美月、ごめんな、ケガさせて・・・」 「どおして麗彪さんが謝るの?ぼくが悪いのに」 美月が悪い事なんてひとつもないんだぞ。 あったとしても、全部俺のせいにしていい。 そう言っても、美月は優しいから、俺を悪者にはしたがらないんだろうけど。 「美月の足が治るまで、俺がずっと世話するから。仕事も休む。ずっと傍にいる」 「・・・ほんと?いいの?・・・嬉しい!」 こんな事で喜んでくれんのか・・・可愛い・・・天使だ。 美月のためなら何だってするのに。 でも・・・俺はトイレの中でも世話するつもりだからな。 いつまで喜んでいてくれるか、少し心配だ。

ともだちにシェアしよう!