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移動手段

麗彪(よしとら)side】 美月(みつき)は格好いい車が好きだ。 見るのも、乗るのも好きだ。 こんなに可愛くても、男の子なんだよな。 だから、電車はどうだろうと思って散歩も兼ね、近所の踏切に見に行った事があった。 予想に反し、美月は電車にびびりまくってしまい、慌てて帰ったんだが・・・。 音や、人がいっぱい乗ってんのが恐いらしい。 それ以来、美月を電車に近付けない事にしている。 「じゃあ、飛行機にします〜?」 「夜、美月が寝てる間に車移動でもいいんじゃないか?」 「車だと片道6時間以上かかりますよ?お嬢に負担がかかるのでは?」 「空港まで私の車、それから飛行機で移動して、向こうではハイヤーかレンタカーを手配しましょう」 「美月ちゃん、飛行機大丈夫かしら?」 リビングで、駿河(するが)時任(ときとう)(にい)()片桐(かたぎり)、カンナが、来週の大阪までの移動手段について相談している。 俺は膝上で寝た美月の体温を感じながら、うとうとしつつ聞いていた。 「遊園地行った時、ジェットコースターにも乗れてたんですよね?大丈夫じゃないですか〜?」 「ああ、意外と楽しそうにしてた」 「お嬢は高い所も平気ですしね」 「念のため明日、美月くん本人にも聞いてみましょう」 「1時間半くらいよね。万が一のために気が紛れる物を持って行きましょ」 話が纏まった様だ。 俺はくっついてる美月があったかくて口を開くのも億劫だったが、こいつらに任せておけば間違いはないだろう。 「麗彪さん?寝るなら美月くんはベッドに連れていきますよ?」 「・・・俺はここに置いてかれんのかよ」 美月を盗られたら目が覚めるぞ。 ちらり、と美月の顔を覗き込むと、穏やかな顔ですやすやとよく眠っている。 思わず笑みをこぼしながら、天使を抱いたまま立ち上がり、寝室へと向かった。 「・・・ん・・・よしとらさん・・・」 「んー?」 目が覚めちまったか? 「どこ・・・いくのぉ・・・」 「ベッド」 「よしとらさんもぉ・・・いっしょ・・・ねるぅ・・・?」 「ああ」 俺の返事を聞いて、ふにゃっと笑って、また眠った。 俺が一緒じゃないって言ったら、ぱちっと起きたんだろうか。 完全に、独りじゃ寝られない子になったな。 まあ、そうなる様に仕向けたんだが。 添い寝相手が俺だけじゃないってのは少し癪に触るが、あいつらなら任せられるし、俺が1番ならそれでいい。 悪夢も見なくなったし。 ・・・あ、そういや片桐から、モンスタートラックにケーキを食われて泣きながら起きたとか報告を受けたな。 それくらいの悪夢なら、まあ許容範囲か。 だが、俺と一緒の時にして欲しかった。 ベッドに美月と横になり、俺にくっ付いたままの華奢な身体を抱きしめる。 美月を慰めるのは俺がいい。 泣かせたくないけど、悪夢を見るなら俺と一緒の時がいい。 そんな事を考える俺は、本当に悪いやつだな。 「ごめんな美月。愛してる」 「・・・ぼく・・・も・・・」 まさか返事が返ってくるとは思わなかった。 ほんと、眠りが深いんだか浅いんだか、不思議だな。

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