188 / 300
移動手段
【麗彪 side】
美月 は格好いい車が好きだ。
見るのも、乗るのも好きだ。
こんなに可愛くても、男の子なんだよな。
だから、電車はどうだろうと思って散歩も兼ね、近所の踏切に見に行った事があった。
予想に反し、美月は電車にびびりまくってしまい、慌てて帰ったんだが・・・。
音や、人がいっぱい乗ってんのが恐いらしい。
それ以来、美月を電車に近付けない事にしている。
「じゃあ、飛行機にします〜?」
「夜、美月が寝てる間に車移動でもいいんじゃないか?」
「車だと片道6時間以上かかりますよ?お嬢に負担がかかるのでは?」
「空港まで私の車、それから飛行機で移動して、向こうではハイヤーかレンタカーを手配しましょう」
「美月ちゃん、飛行機大丈夫かしら?」
リビングで、駿河 、時任 、新 名 、片桐 、カンナが、来週の大阪までの移動手段について相談している。
俺は膝上で寝た美月の体温を感じながら、うとうとしつつ聞いていた。
「遊園地行った時、ジェットコースターにも乗れてたんですよね?大丈夫じゃないですか〜?」
「ああ、意外と楽しそうにしてた」
「お嬢は高い所も平気ですしね」
「念のため明日、美月くん本人にも聞いてみましょう」
「1時間半くらいよね。万が一のために気が紛れる物を持って行きましょ」
話が纏まった様だ。
俺はくっついてる美月があったかくて口を開くのも億劫だったが、こいつらに任せておけば間違いはないだろう。
「麗彪さん?寝るなら美月くんはベッドに連れていきますよ?」
「・・・俺はここに置いてかれんのかよ」
美月を盗られたら目が覚めるぞ。
ちらり、と美月の顔を覗き込むと、穏やかな顔ですやすやとよく眠っている。
思わず笑みをこぼしながら、天使を抱いたまま立ち上がり、寝室へと向かった。
「・・・ん・・・よしとらさん・・・」
「んー?」
目が覚めちまったか?
「どこ・・・いくのぉ・・・」
「ベッド」
「よしとらさんもぉ・・・いっしょ・・・ねるぅ・・・?」
「ああ」
俺の返事を聞いて、ふにゃっと笑って、また眠った。
俺が一緒じゃないって言ったら、ぱちっと起きたんだろうか。
完全に、独りじゃ寝られない子になったな。
まあ、そうなる様に仕向けたんだが。
添い寝相手が俺だけじゃないってのは少し癪に触るが、あいつらなら任せられるし、俺が1番ならそれでいい。
悪夢も見なくなったし。
・・・あ、そういや片桐から、モンスタートラックにケーキを食われて泣きながら起きたとか報告を受けたな。
それくらいの悪夢なら、まあ許容範囲か。
だが、俺と一緒の時にして欲しかった。
ベッドに美月と横になり、俺にくっ付いたままの華奢な身体を抱きしめる。
美月を慰めるのは俺がいい。
泣かせたくないけど、悪夢を見るなら俺と一緒の時がいい。
そんな事を考える俺は、本当に悪いやつだな。
「ごめんな美月。愛してる」
「・・・ぼく・・・も・・・」
まさか返事が返ってくるとは思わなかった。
ほんと、眠りが深いんだか浅いんだか、不思議だな。
ともだちにシェアしよう!

