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たこ焼きと腐れ縁
【麗彪 side】
美月 を連れて、大阪までやって来た。
心配していた飛行機での移動も、思いの外喜んでいたので安心したが、問題はここからだ。
昼頃ホテルにチェックインし、外に昼飯を食べに出たのはいいものの・・・。
「美月、絶対に手ぇ放すなよ?」
「うんっ」
人が多い。
今夜ある会合の調整で駿河 と片桐 がいない中、俺と時任 と新名 、カンナの4人で美月を護るつもりだった。
それなのに・・・。
「美月ちゃん、あの店のたこ焼きが人気みたいだよ!すっごい並んでるけど!」
「ほんとだぁ!めぐるさん、並ぼ!みんな並んでるなら1番美味しいんだよ!」
「うんうん!行こいこっ!」
カンナでなく環流 が美月を引っ張って行きやがる。
美月にとって環流はレアキャラだからか、会うとテンションが上がるんだよな。
「麗彪さんっ、ほら、行くよっ!」
「ああ、わかったから走るな。また捻挫するぞ」
本当は店に入って飯にしたかったが、美月が本場のたこ焼きを食べたいと言うから、こうして人通りの多い街中を歩いている。
まあ、時任と新名が近付くなオーラ出してるから、大丈夫だとは思うが・・・。
「よっちゃぁん、こぁんなとこおったぁ。なにしとるん?」
「ああ"?」
・・・最悪だ。
なんでこんなとこにいんだよ。
「綾 ・・・てめぇ、何しに来た」
「よっちゃん今日来る聞いてぇ、遊ぼぉ思て会いに来てん。ほんで、その子が嫁さんなん?かぁいい子やなぁ」
くそ、美月を見られた。
九十九 綾、関西 の組の若頭だ。
親父たちに付き合いがあり、俺とこいつも腐れ縁。
夜の会合で会うんだから、わざわざ現れんじゃねぇよ。
「環流、たこ焼き買ってこい。ホテル戻るぞ」
「あれぇ?カンナちゃんやなくて環流くんなん?時任も久しぶりやなぁ。新名ぁ、なんや人間ぽくなってもぉてるやん、どないしたん?」
「煩 ぇ、いいから美月に近付くな」
綾が現れた途端、美月が口を噤 んだままだ。
カタギにはわからない、綾 の狂気を感じ取ってるんだろう。
関西 のやつらには近付けたくなかったのに・・・。
「なぁなぁお嬢ちゃん、俺なぁ、九十九綾ゆうねん。綾ちゃんて呼んでええよぉ。お嬢ちゃんのお名前はぁ?」
「・・・みつき、です」
「みつきちゃんかぁ、ほんまかぁいい・・・あっ、環流くんがたこ焼き買 うてきてくれたで。どこで食べよぉか?」
「ホテルだ。行くぞ美月、綾にバイバイしような」
俺に促され、控えめに手を振る美月。
あの親父 相手でも、笑顔で「ばいばい」なんて言う美月が、綾相手ではそうもいかない様だ。
綾 が、俺の美月を値踏みする様な眼をしやがるから。
「おいで美月」
目立つだろうが、怯えた美月を落ち着かせねぇと。
美月を片腕で抱き上げ、俺の肩に顔を伏せさせて歩き出す。
時任、新名、環流は綾に軽く会釈して俺に続いた。
「ほなまたねぇ、みつきちゃぁん」
この分だとホテルも知られてるだろう。
会合には駿河と時任を連れて行くつもりだったが、念のため時任も置いていくか。
面倒臭ぇ事になったな・・・。
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