194 / 300

玉子焼きと城とステーキ

麗彪(よしとら)side】 関西(こっち)に来て3日目。 車を借りて、兵庫まで明石焼きを食いに来た。 大阪で食ったたこ焼きよりゆるめの形状。 だし汁に付けて食べるんだが・・・これ、絶対中熱いだろ。 「美月(みつき)、半分に割ってからふーふーしろ」 「はぁい」 ちゃんと言っとかないと、意外と思い切りのいい美月はひと口で食べかねない。 「はっひゅ!」 「美月、ちゃんとふーふーしないと駿河(こいつ)みたいになるからな」 「駿河(するが)さんだいじょぶ?お水っ」 「たこ焼きとはまた全然違うね。俺はたこ焼き派かな」 「私はソースより明石焼き(こっち)の方が好きですね」 「お嬢、明石焼きって、こっちでは玉子焼きって言うんですよ。はい、あーん」 新名(にいな)め、美月の火傷防止でなければそんな事させねぇからな。 だが、確かに美月が好きそうな味だ。 気に入った様で、ぱくぱく食べている。 ・・・そんなに食って大丈夫か? 後で神戸牛も食いに行こうって約束したよな? 「食べたらどうします〜?美月くん、このままじゃ神戸牛食べてくれませんよ〜?」 だろうな。 そういや、男の子の美月はあれに興味があるだろうか。 「なあ美月、城見に行くか?」 「しろ?・・・お城!?あるの?」 興味がある様なので、車に乗って姫路城へ。 美月は想像以上に大喜びだった。 「おおおっ!」 「気に入ったか?」 「夢の国のお城よりかっこいいっ!!」 そうか、やっぱ日本の城の方が好みか。 ・・・そういや、榊家(じっか)に刀あったな。 今度見せてやるか・・・いや、危ないよな。 美月が来る様になってから、親父もどっか仕舞い込んでるみたいだし。 「探検しよおっ!」 「おー!」 美月が新名の手を引いて走り出す。 「こら、また捻挫しちゃうよ!走らないのっ」 「また迷子になるぞ」 環流(めぐる)時任(ときとう)に止められ、素直に足を止めた。 迷子、という言葉にびくっとなったな。 「麗彪さん・・・」 「手ぇ繋ぐか?」 「うんっ!」 新名は美月の暴走を助長するので外させ、俺と片桐(かたぎり)と手を繋がせて歩く。 俺だけでも良かったんだが、美月がきょろきょろして前も足元もまったく見ないから、転倒防止の片桐だ。 「ここにも王様、いたの?」 「王様じゃなくて殿様だな」 「あ、そっか。誰のお城だったの?」 「何人かいましたけど、有名なところだと〜・・・ヒントはおさるさんですね〜」 「え?お猿さん?・・・あっ!豊臣秀吉?」 「さすがお嬢!正解です!」 美月、歴史はそんなに得意じゃなさそうだったが、さすがだな。 2、3時間程見て歩いて、また車で移動。 約束していた神戸牛を食いに行った。 料理人が目の前の鉄板で焼き、綺麗にカットして提供するミディアムレアのステーキを頬張る美月。 「んーっ!美味しいねっ!」 美月が嬉しそうで俺も嬉しい。 結構歩いたからか、割と良く食べてくれたし。 苦手な脂身をカットしてくれる料理人に、にこにこと礼を言うのが可愛い・・・が、その笑顔は俺だけに向けとけ。 どっかの狐が料理人を睨んでるからな。

ともだちにシェアしよう!