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鹿さん公園と人間を食べる鹿
【美月 side】
朝起きて、お出かけの準備中。
「悪い美月、俺の分まで鹿に食わせてやってきてくれ」
明日お家 に帰るから、今日はこれから鹿さん公園に行くのに、麗彪 さんはいっしょに行けないんだって。
「・・・ぅん」
「ごめん。用が済んだらすぐ追いかけるから。な?」
「・・・ぅん」
「鹿が襲ってきたら片桐 を盾にするんだぞ?それから新名 を囮にして逃げろ」
「・・・そんな事しない」
麗彪さんは大事な用事があるから、仕方ない。
麗彪さん以外は、みんないっしょだもん。
片桐さんも、新名さんも、駿河 さんも時任 さんもめぐるさんも、いっしょ。
「麗彪さんは・・・ひとりで大丈夫?」
「ああ。美月が無事なら俺は大丈夫だ」
ほんとかな。
昨日だって、誰かから電話がきて、ちょっと怒ってて・・・。
それから、用事が出来たから鹿さん公園は行けなくなったって言ってた。
あの電話してきた人のせいで、麗彪さんはいっしょに鹿さん公園行けなくなったんだ。
誰から電話だったんだろ。
「それじゃ〜俺たち先に出ますね〜」
「行くぞ美月」
駿河さんと時任さんと手を繋いで、麗彪さんだけ残してホテルから出た。
麗彪さん、本当に大丈夫?
ひとりで迷子にならない?
「お嬢、麗彪さんなら大丈夫ですよ。おやつの時間には合流します」
「・・・ぅん。でも、麗彪さん、ひとりで迷子にならない?」
「大丈夫ですよ。もし迷子になったら、私が迎えに行きますから」
新名さんと片桐さんが大丈夫って言ってくれてるし、うん、麗彪さんは大丈夫。
かっこよくて、なんでも出来て、強いもん。
ぼくはみんなと車に乗って、鹿さん公園がある場所に向かった。
「あゎ・・・ほんとに、いるぅ・・・!」
「気を付けてくださいね。美月くんが食べられてしまったら大変ですから」
「・・・えっ?鹿って人間食べるの?」
広い公園に、鹿がいっぱい。
あっちで歩いてたり、こっちで寝てたり、向こうで・・・。
「あっ、ご飯あげてる!」
「俺、鹿さんせんべい買ってきますね!お嬢は片桐と時任を盾にして待っててください!」
新名さんが、鹿のごはん、鹿さんせんべいを買いに行ってくれた。
もお、新名さんまであんな事言って・・・片桐さんも時任さんも、盾になんてしないよ?
しばらく、めぐるさんとどの鹿が1番可愛いか見比べてたら・・・。
「あ〜っと・・・嫌な予感がするんですけど〜」
駿河さんが、遠くの方見ながら言った。
どおしたの?
「あの馬鹿・・・」
時任さん、ばかって言っちゃだめだよ?
誰の事言ったの?
「美月くん、抱っこしていいですか?」
片桐さんがぼくを抱っこしてくれた。
どおして?
「ちょ、新名!こっち来んな!」
めぐるさんが叫んだ。
え、新名さん?
新名さんがどうかし・・・。
「あ・・・新名さんが鹿に追っかけられてる・・・」
こっちに走ってくる新名さんが、たくさんの鹿に追いかけられてる。
新名さんがこっち来たら、あのたくさんの鹿もこっちに来ちゃうんじゃ・・・。
「美月くん、掴まって!」
片桐さんがぼくを抱っこしたまま走る。
やっぱり、逃げなきゃいけない状況なんだ?
でも、新名さんも助けてあげなきゃ、鹿に食べられちゃうんじゃない?
「時任パぁース!」
「くそっ!寄越すな!」
新名さんが時任さんになにか投げて渡した。
時任さんが持ってるの・・・もしかして鹿さんせんべい?
あ、今度は時任さんが鹿に追いかけられてる?
「駿河、お前も待て!」
「ええ〜?俺までターゲットにされるじゃん〜!」
時任さんから駿河さんへ、鹿さんせんべいと追いかけて来る鹿が移動した。
あの鹿さんせんべい持った人が、鹿に食べられちゃう人なのかな・・・。
「環流 〜!」
「いらないからっ!鹿まじじゃん!恐いこわいっ!」
今度はめぐるさんが・・・あ、鹿に追い付かれちゃった・・・。
たくさんの鹿に囲まれちゃってる・・・。
「めぐるさん、食べられちゃう!」
「環流は食べられても自分で治せますから、大丈夫ですよ。美月くんは、この小さい鹿に鹿さんせんべいあげましょうか」
いつの間にか片桐さんが立ち止まってて、すぐ側に小さい鹿が。
大人しそお・・・この子ならぼくの事食べないかも。
新名さんから鹿さんせんべいをもらって、あげてみる。
・・・思ったよりぐいぐい食べてるぅっ!
ちょっと恐かった・・・けど、鹿も可愛かったし、みんなが走って追いかけられてて楽しかったな。
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