195 / 300

鹿さん公園と人間を食べる鹿

美月(みつき)side】 朝起きて、お出かけの準備中。 「悪い美月、俺の分まで鹿に食わせてやってきてくれ」 明日お(うち)に帰るから、今日はこれから鹿さん公園に行くのに、麗彪(よしとら)さんはいっしょに行けないんだって。 「・・・ぅん」 「ごめん。用が済んだらすぐ追いかけるから。な?」 「・・・ぅん」 「鹿が襲ってきたら片桐(かたぎり)を盾にするんだぞ?それから新名(にいな)を囮にして逃げろ」 「・・・そんな事しない」 麗彪さんは大事な用事があるから、仕方ない。 麗彪さん以外は、みんないっしょだもん。 片桐さんも、新名さんも、駿河(するが)さんも時任(ときとう)さんもめぐるさんも、いっしょ。 「麗彪さんは・・・ひとりで大丈夫?」 「ああ。美月が無事なら俺は大丈夫だ」 ほんとかな。 昨日だって、誰かから電話がきて、ちょっと怒ってて・・・。 それから、用事が出来たから鹿さん公園は行けなくなったって言ってた。 あの電話してきた人のせいで、麗彪さんはいっしょに鹿さん公園行けなくなったんだ。 誰から電話だったんだろ。 「それじゃ〜俺たち先に出ますね〜」 「行くぞ美月」 駿河さんと時任さんと手を繋いで、麗彪さんだけ残してホテルから出た。 麗彪さん、本当に大丈夫? ひとりで迷子にならない? 「お嬢、麗彪さんなら大丈夫ですよ。おやつの時間には合流します」 「・・・ぅん。でも、麗彪さん、ひとりで迷子にならない?」 「大丈夫ですよ。もし迷子になったら、私が迎えに行きますから」 新名さんと片桐さんが大丈夫って言ってくれてるし、うん、麗彪さんは大丈夫。 かっこよくて、なんでも出来て、強いもん。 ぼくはみんなと車に乗って、鹿さん公園がある場所に向かった。 「あゎ・・・ほんとに、いるぅ・・・!」 「気を付けてくださいね。美月くんが食べられてしまったら大変ですから」 「・・・えっ?鹿って人間食べるの?」 広い公園に、鹿がいっぱい。 あっちで歩いてたり、こっちで寝てたり、向こうで・・・。 「あっ、ご飯あげてる!」 「俺、鹿さんせんべい買ってきますね!お嬢は片桐と時任を盾にして待っててください!」 新名さんが、鹿のごはん、鹿さんせんべいを買いに行ってくれた。 もお、新名さんまであんな事言って・・・片桐さんも時任さんも、盾になんてしないよ? しばらく、めぐるさんとどの鹿が1番可愛いか見比べてたら・・・。 「あ〜っと・・・嫌な予感がするんですけど〜」 駿河さんが、遠くの方見ながら言った。 どおしたの? 「あの馬鹿・・・」 時任さん、ばかって言っちゃだめだよ? 誰の事言ったの? 「美月くん、抱っこしていいですか?」 片桐さんがぼくを抱っこしてくれた。 どおして? 「ちょ、新名!こっち来んな!」 めぐるさんが叫んだ。 え、新名さん? 新名さんがどうかし・・・。 「あ・・・新名さんが鹿に追っかけられてる・・・」 こっちに走ってくる新名さんが、たくさんの鹿に追いかけられてる。 新名さんがこっち来たら、あのたくさんの鹿もこっちに来ちゃうんじゃ・・・。 「美月くん、掴まって!」 片桐さんがぼくを抱っこしたまま走る。 やっぱり、逃げなきゃいけない状況なんだ? でも、新名さんも助けてあげなきゃ、鹿に食べられちゃうんじゃない? 「時任パぁース!」 「くそっ!寄越すな!」 新名さんが時任さんになにか投げて渡した。 時任さんが持ってるの・・・もしかして鹿さんせんべい? あ、今度は時任さんが鹿に追いかけられてる? 「駿河、お前も待て!」 「ええ〜?俺までターゲットにされるじゃん〜!」 時任さんから駿河さんへ、鹿さんせんべいと追いかけて来る鹿が移動した。 あの鹿さんせんべい持った人が、鹿に食べられちゃう人なのかな・・・。 「環流(めぐる)〜!」 「いらないからっ!鹿まじじゃん!恐いこわいっ!」 今度はめぐるさんが・・・あ、鹿に追い付かれちゃった・・・。 たくさんの鹿に囲まれちゃってる・・・。 「めぐるさん、食べられちゃう!」 「環流は食べられても自分で治せますから、大丈夫ですよ。美月くんは、この小さい鹿に鹿さんせんべいあげましょうか」 いつの間にか片桐さんが立ち止まってて、すぐ側に小さい鹿が。 大人しそお・・・この子ならぼくの事食べないかも。 新名さんから鹿さんせんべいをもらって、あげてみる。 ・・・思ったよりぐいぐい食べてるぅっ! ちょっと恐かった・・・けど、鹿も可愛かったし、みんなが走って追いかけられてて楽しかったな。

ともだちにシェアしよう!