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⭐︎番外編⭐︎時任の誕生日
*[10月7日]と[たまにはみんなで]の間*
【時任 side】
朝起きたら顔を洗い洗濯乾燥機を回して、朝食の支度をするのがルーティンだ。
今朝もそのつもりで部屋を出ると、ドアの前に美月 が立っていた。
「時任さん、お誕生日おめでとおっ」
お誕生日・・・あ、今日は10月9日で俺の誕生日か。
忘れてた。
俺は麗彪 さんと同い年だから、今日で24になる。
「ありがとう、美月。それ言うために早起きして部屋の前で待ってたのか?」
「うんっ。今日はね、時任さんの助手するの!全部お手伝いするからね」
「そうか。麗彪さんは放っておいていいのか?」
「だいじょぶ。まだ寝てるし、昨日言っておいたから」
本当に大丈夫なのか。
麗彪さんも、よく許したな。
まあ、美月に言われたら拒めないだろうし、外に出さなきゃ大丈夫か。
洗面所で顔を洗い、美月が用意してくれたタオルを使う。
助手って、付きっきりで俺の世話するつもりか?
「お洗濯?」
「ああ」
洗濯乾燥機に放り込む物と、クリーニングに出す物を分け、クリーニングに出す分はランドリーバッグに放り込む。
美月も自分で判断できる物を仕分け、ランドリーバッグを開いて俺が入れやすい様にしてくれた。
やっぱり、こっちの邪魔にならない立ち回りが上手いな。
美月自身が賢いのもあるんだろうが、暴力を恐れ気を使って生きてきた結果だと思うとやるせない。
「よし、スタートボタン押していいぞ」
「はぁい」
コースを選び、洗剤と柔軟剤を入れ、最後のスタートボタンを美月に押させてやる。
嬉しそうだ。
次はキッチンへ向かい、朝食を作る。
なんにするか・・・。
「美月はチーズトースト焼いてくれ」
「はいっ」
ベーコンを適当に刻んでから炒めて、塩胡椒と牛乳を混ぜた溶き卵を流し込む。
「チーズは?」
「トーストにのせたろ」
美月はチーズも好きなんだよな。
オーブントースターにパンを並べてスイッチを押し、俺の隣でサラダを作り始める美月。
レタスをちぎって、ミニトマトを添えている。
「手際が良くなったな」
「ほんと?えへへ」
朝食をダイニングテーブルに並べると、少し不機嫌そうに麗彪さんが起きてきた。
美月を俺の助手に付けた事、許しはしたが納得はしていないんだろうな。
「時任、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
美月に言えって言われたんだな。
いつも、お互いの誕生日なんて忘れて過ごしていたのに。
「ふふ、麗彪さん照れてる」
「照れてねぇよ。助手終わったら俺んとこちゃんと戻って来いよ」
「うん。いい子で待っててね」
たまに、麗彪さんより美月の方が大人に見える。
まあ、麗彪さんは元々子どもっぽいとこあるしな。
それから、美月は宣言通り1日中俺に助手として付いてくれた。
リビングから恨めしそうな視線を感じたが、美月本人の意志で俺の側にいるから文句は言ってこない。
午後になり、駿河 と片桐 が帰ってきて、美月が麗彪さんでなく俺にずっと付きっきりなのを羨ましがった。
「時任さんお誕生日だから、ぼく今日は時任さんの助手なの!ね、時任さんっ」
リビングでおやつを食う時も、俺に紅茶を淹れてくれて、俺の隣に座って片桐が買ってきたマドレーヌを食べる美月。
恨めしそうな視線が増えたが、こうして優越感に浸るのも悪くないな。
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