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⭐︎番外編⭐︎カンナの誕生日
*[わがまま]と[マーキング]の間*
【カンナside】
午前中は仕事して、午後は部屋に来いって麗彪 くんに呼ばれてる。
わざわざ呼ぶなんて、美月 ちゃんの具合が悪いのかしら。
「麗彪くーん、来たわよぉ。美月ちゃんはぁ?」
玄関で靴を脱ぎ上がろうとしたら、美月ちゃんがぱたぱたと駆けて来た。
良かった、元気そうだわ。
「美月ちゃ・・・」
「カンナさんっ、お誕生日おめでとっ!」
「・・・えっ?」
11月11日 はあたしの、37歳の誕生日。
まさか、美月ちゃんが知っててくれてたなんて・・・。
「嬉しいぃっ!ありがとぉ美月ちゃんっ!」
思わずぎゅうっとハグしちゃう。
誕生日だもの、麗彪くんだってこれくらい許してくれるわよね。
「あのねっ、時任 さんとケーキ焼いたのっ!ロウソクふーってして?」
「ええー!?ありがとおぉ!」
美月ちゃんに手を引かれリビングに入ると、時任くんと駿河 くんと、わかりやすく不機嫌そうな麗彪くんが待ってた。
あたしに美月ちゃんとられて悔しいのね。
やだ、最高の誕生日プレゼントだわ。
「あらっ!可愛いケーキ!」
ラフランスのコンポートが薔薇の花の形に飾られたショートケーキ。
え、これ、美月ちゃんが作ったの?
「美月ちゃん凄いわねっ!」
「時任さんにいっぱいお手伝いしてもらったの。お花はね、ぼくがやったんだよ?」
「頭が良くて可愛くて器用ねぇ」
もおっ、美月ちゃん最高!
持って帰りたいっ!
「38歳おめでとう」
「37よっ!レディの年齢を公開するなんて麗彪くんサイテー!」
「あらふぉ・・・」
「黙んなさいっ!」
まったく、駿河くんまで余計な事言うんじゃないわよ。
美月ちゃんは時任くんとケーキに立てるロウソクを持ってきたんだけど、なんだか様子がおかしいわね・・・。
「ご、ごめんなさい、ぼく、麗彪さんにカンナさん何歳か聞いちゃって・・・それで・・・」
美月ちゃんの手には3と7の数字の形をしたロウソクが。
「いいのよぉ!美月ちゃんはいいのぉ!あたしの歳のロウソク用意してくれたのね!ありがとぉ!嬉しい!美月ちゃん可愛いっ!」
また美月ちゃんをぎゅってして、美月ちゃんもぎゅってし返してくれて、麗彪くんに睨まれながら最高の気分でロウソクを吹き消した。
こんなに嬉しい誕生日、何十年ぶりかしら・・・。
「カンナさん、あーん」
「あー・・・んっ!ん〜美味しい〜!」
ケーキももちろん美味しいけど、なにより美月ちゃんにあーんして貰えるの幸せなんですけどー!
麗彪くんも、いつもならすぐ美月ちゃん取り上げるのに、恨めしそうな視線を送ってくるだけ。
いいわぁ、この愉悦・・・。
榊家 に拾われて、医者になるために努力して、恩返しのつもりで馬鹿どもの怪我を縫ったり切ったり開いたりしてて、ある日麗彪くんが連れて来て囲い始めたカワイイ娘 。
女装以外に、人生に潤いを与えてくれる存在。
「美月ちゃん、これからも可愛く、元気でいてね」
「カンナさんも、可愛くて元気でいてね」
美月ちゃんはあたしが女装家って事、なんとなく知らされてるはずだけど、女装した男じゃなくて女性として見てくれてるのよね。
いつか女装してない自分も、見て欲しいな。
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