205 / 300
⭐︎番外編⭐︎新名の誕生日
*[お子様ランチと子供舌]と[頼み]の間*
【新名 side】
お嬢の悪夢 を本人の口から聞いてから、その時俺が側にいたらと何度も考えてしまう。
15年間・・・長すぎる、取り返しの付かない壊れた時間が、お嬢の中に積み重ねられてる。
全部取り出して、綺麗なものと入れ替えてあげたい。
妹 は帰ってこないけど、お嬢は生きていてくれた。
もう絶対に辛い思いをさせたくない。
「にーなさんっ」
「わっ」
リビングで洗濯物を畳んでいた俺に、背後からそおっと近付いて来ていたのは気付いていた。
きっと俺をびっくりさせようとしているんだな、と思ったから、気付かないフリをしたまま声をかけてくれるのを待っていたんだけど、まさか背中に抱き付いてもらえるとは・・・。
「お嬢、びっくりしましたよ。いつ帰ってきたんです?」
「んふふっ、今さっき!」
今日は俺と駿河 とカンナでお嬢の護衛だったが、カンナが自分の部屋にお嬢を誘い、駿河が付いて行った。
本当は俺が付いて行きたかったけど、駿河は家事スキルが底辺だから仕方ない。
「早かったですね?何して遊んで来たんですか・・・ん?」
背中にしがみ付いたままのお嬢をおんぶしようと後ろに手を回したら、お嬢の服に違和感が・・・。
「カンナさんがね、ワンピース着せてくれたんだよ。お花の模様の!」
お嬢が俺から離れた。
振り返ると、耳の下あたりで髪を2つ結びにして、白地に白と優しい青の小さな花が散らされた膝丈のワンピースを着た、可愛い女の子が。
「・・・か・・・・・・わい・・・です・・・」
お嬢が可愛過ぎる。
ふわふわしたシフォンワンピースがよく似合う。
これ外に出したら秒で攫われるやつだ・・・。
「えっと・・・・・・お兄ちゃん、お誕生日おめでとっ!」
お兄ちゃん。
お嬢が、俺の事、お兄ちゃんって呼んだ。
どうして・・・お嬢は妹の事を知らないはず・・・駿河が話した?
いや、違うな、俺をお兄ちゃんと呼んであげてって言われたんだ。
きっと、俺が喜ぶからって・・・。
「ありがとう・・・みつ・・・っ」
あれ、俺ってこんなに涙腺脆かったっけ。
4月4日 を祝われた事なんて、初めてだ。
「ゎわっ、どおしたの?だいじょぶ?どっか痛い?お兄ちゃ・・・」
「いえ、大丈夫です。嬉しくて・・・お嬢、ぎゅってしていいですか?」
俺が聞いたら、お嬢がぱっと両手を広げて「おいでっ」と言ってくれた。
お兄ちゃんって呼んでくれた割に、俺の事弟みたいに扱ってません?
お言葉に甘えて、小さなお嬢に覆い被さる様に抱き付く。
俺の背中に手を回して、よしよしと摩 ってくれてるのも、やっぱり弟扱いされてる感が否めない。
なんだろう、この多幸感・・・。
「お誕生日だから、今日1日新名さんはぼくのお兄ちゃんだよ。いっぱい甘えていいよっ!」
「ははっ、ありがとうございますっ!」
普通は弟が兄に甘えるんですよ、お嬢。
なんだか、俺に都合のいい様に、駿河が吹き込んでくれたみたいだな。
・・・明日から激務になるんじゃないだろうか。
「このお花、可愛いですね。なんのお花ですか?」
お嬢を抱っこしてソファに座り、ふわふわした姿を愛でる。
ワンピースに描かれた小さな花は、花びらが5枚。
特に花に詳しいわけではないけど、見た事あるような・・・。
「勿忘草 だよ。あのね、花言葉ってあって、勿忘草のは、真実の愛だって!」
ああ、そうだ。
青い勿忘草の花言葉は真実の愛。
でも、ワンピースには白い勿忘草も描かれている。
白は確か・・・。
ともだちにシェアしよう!

