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⭐︎番外編⭐︎片桐の誕生日
*[片桐の寝かし付け]の翌日*
【片桐 side】
昨夜 は美月 くんが悪夢を見てしまい焦ったが、本人は覚えているだろうか。
そろそろ起こそうと、声をかける。
「美月くん、朝ですよ」
「・・・ん、・・・んん・・・あさぁ・・・?」
「朝です。顔洗いに行きましょうか」
目元をごしごしと擦ってしまうのをやんわり止めて、手を引き洗面所へ。
顔を洗って、タオルで拭いてあげながら、目元が腫れていないか確認する。
・・・良かった、大丈夫そうだ。
と、安心したのも束の間。
「み、美月くん?どうしました?」
何故か急に驚いた顔をして、焦った様な絶望した様な表情を見せる美月くん。
昨夜の悪夢を思い出したのか・・・?
「や、やり直しっ!やり直したいっ!」
「なにをです?」
もう1度顔を洗いたいのかな?
「今っ、今起きたって事にしてっ!」
「?・・・はい、わかりました」
起きる所からやり直したいのか。
いったい何故・・・。
「片桐さん、お誕生日おめでとうございますっ!・・・ぅぅ、起きて最初に言いたかったのにぃ」
・・・君って子は、どこまで可愛いんですか。
5月28日 なんて自分でも忘れていたのに。
「ありがとうございます。まさか、起きてすぐ祝ってもらえるとは。嬉しいです」
「えへへ。・・・あっ、そおだ、ぼくが作ったケーキ、食べられちゃったんだよ?上手にできたのに・・・」
おっと、昨夜の悪夢の話ですね。
モンスタートラックに食べられてしまったのは、美月くんの手作りケーキだったのか。
それはさぞかし悔しかっただろう。
「じゃあ、一緒に作りましょうか。その前に朝ご飯ですね」
おやつの時間には麗彪 さんたちが帰ってくる。
それまで美月くんを独り占めだ。
「そう言えば、美月くんはジャッカルとコヨーテの見分けがつくんですか?」
「んぇ?・・・っうん、わかるよ!」
朝食のフレンチトーストを咀嚼している所に話しかけてしまい、慌てて飲み込んでから答えてくれた。
私とした事が・・・喉に詰まらせでもしたらどうする・・・。
「すみません、食べてるのに話しかけて・・・」
「んーん、だいじょぶ。片桐さん、ジャッカルとコヨーテの違い、知りたい?」
「はい。食べ終わったら教えてください」
それから、ジャッカルとコヨーテの見分け方を教わり、苺たっぷりのケーキを作り、軽めの昼食を摂ってから、次に行くローラー滑り台を一緒に探した。
麗彪さんがいつもそうしているからか、美月くんは当たり前の様に私の膝上に座ってPC画面を見ている。
・・・さすがにこれは、麗彪さんに見られたら戦地に送られかねないな。
「これは?遠い?」
「車で・・・1時間半くらいですね」
「じゃあ次ここ行こっ!」
楽しい時間が過ぎ去るのはあっと言う間で、帰宅した麗彪さんに美月くんを膝に座らせていたのを見られ、これは来週激務になるぞと覚悟した。
それでも、おやつに美月くんと一緒に作ったケーキを食べたら、どんな過酷な仕事でも構わないと思ってしまう。
「片桐さん、あーん」
こんなに素晴らしい福利厚生があるのだから、麗彪さん の視線は恐くても、最高の職場だと断言できる。
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