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ロシアンルーレット
【麗彪 side】
「嘘だろ」
あまりに信じ難 い光景に、愕然とする。
平穏な日常に混乱をもたらす存在が、俺の目の前に、何故・・・。
「嘘やないでぇ。綾 ちゃん登場やぁ!」
「登場すんな!お前の出番は終わっただろが!」
「いやいやなんでやねん!いつだって俺は俺の人生ちゅう物語の主役やで?常に舞台の真ん中におる!」
何が主役だ、ふざけんな。
100歩譲ってそうだとしても、西で物語綴ってろ。
東に来るんじゃねぇよ。
「何しにきやがった」
「美月 ちゃん元気ぃ?一緒に遊ぼ思て来たんやけど、なぁんでよっちゃんだけなん?」
親父に呼び出され榊家 に来たが、嫌な予感が想像を超えた形で的中した。
玄関を開けたら綾が立ってるなんて思わねぇだろ・・・。
美月を留守番させたのは正解だったな。
「さっきまでなぁ、親父さんと美月ちゃんの話で盛り上がっててん。榊家 の神様やて言うてはったわぁ。確かに美月ちゃんて、邪気払 てくれるよなぁ。ありがたいわぁ会いたいわぁ」
「会わせねぇよ」
綾と一緒に親父の待つ居間へ行くと、ソースの匂いが充満していた。
何事だ・・・。
「おう、来たかよっちゃん。たこ焼きロシアンルーレットしてんだが、お前どれ食う?」
「中身は何だ」
「チーズ、梅干し、ハバネロ、チョコ、グミ、ホヤ」
「弾込め過ぎだ。1発でいいだろが」
何を呑気に居間でたこ焼きパーティーしてんだよ。
美月を狙う関西の蛇が来てるっつうのに。
中身ももっと普通にワサビとかカラシとかにしとけよ・・・。
「うわぁ・・・これグミやん・・・うぇ・・・やばぁ・・・」
躊躇なく食った綾が被弾した。
・・・俺も食わなきゃなんねぇのか。
「・・・・・・・・・んぐ・・・っ」
チョコかよ・・・しかもチョコの中からさらに苺味のソースが・・・。
だめだ、味わったらだめだ、考えずに飲み込んでしまえ・・・!
「よっちゃん何味やった?」
「思い出したくない」
藤堂 が持ってきたお茶で口の中の不快感を押し流し、次のたこ焼きに手を伸ばす綾を視界の端に捉えたまま親父と話す。
「で、なんでわざわざ天敵を呼び寄せたんだ」
「呼んだんじゃあない、勝手に来たんだ。西 から良くないモンが流れて来てるらしい。それを片付けにな。済んだら帰るだろ」
「なぁ、これなにぃ?なんや水っぽ・・・きもぉ・・・」
「ホヤだろ。おい出すな飲み込んどけ」
親戚の家に遊びに来た状態の綾だが、一応仕事で来たのか。
なら、放っときゃいい・・・。
「せや、よっちゃん家 ぃ泊めてぇや。ええとこ住んでんねやろ?あ、美月ちゃんと一緒に寝るから布団は用意せんでええよぉ」
「榊家 泊まれよ。美月は俺のベッドで一緒に寝てるから、お前の寝るスペースはねぇぞ」
結局、残りのたこ焼きを同時に食ってリアクションせずにいられたらマンションに来るって話になってしまった。
綾は躊躇う事なくたこ焼きを口に放り込み咀嚼し、笑顔で飲み込んだ。
まさかチーズ を引いたのか?
「タネ入っとった」
「梅干しかよ」
嫌で嫌で仕方なかったが、綾を連れてマンションへ帰る事に。
美月・・・喜ぶんだろうな・・・俺は複雑だぞ・・・。
だがせめて同じ部屋で寝かせない様、新名 の部屋に預けると決め、車のエンジンをかけた。
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