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夢と紫煙と口止め
【麗彪 side】
美月 には仕事だと言って、榊家 に来ている。
知ったところでどうしようもないのに、知れるのなら知っておきたくて、親父に時間をもらった。
「みっちゃんは?」
「片桐 たちと山ん中にあるデカい滑り台に行ってる」
「へえ。みっちゃん滑り台好きだもんなあ」
たまに片桐と車で出掛けて、2人で滑ってきてるらしい。
今日は駿河 と環流 も一緒だ。
「で、聞きたい事ってなんだ」
「美月の事だ。あの女が美月になにをしたか、知ってる事を全て教えて欲しい」
親父はため息混じりに煙草の煙を吐き、灰皿に灰を落とす。
「お前が知ってる以上の事はねえと言ったろ」
「首、絞められてたのか?」
「・・・・・・みっちゃんが言ったのか」
「魘 されながら息止めて、首元抑えてたんだ」
ただ、あの悪夢を見た翌日の美月は合宿ごっこを楽しんでいて、夢の事は記憶にないような素振りだった。
「・・・・・・そうか。夢に見ちまったのか」
親父が煙草を灰皿に押し付けた。
ぐりぐりと、擦り潰す様に。
「知った所でどうしようもないぞ。なかった事には出来ない」
「それでも知っておきたい。トラウマを呼び起こすようなモノを美月に近付けない様にする」
「綾 が首に包帯巻いてたな。あれが原因が・・・」
煙草を取り出し、咥え、愛用のオイルライターで火を着ける。
カチャン、とライターを閉じる音。
ふー・・・とゆっくり紫煙を吐く。
「殴る蹴るは殆ど毎日。左腕と両足は、何度か酷く腫れた。骨にヒビが入ったらしい。左肩を脱臼させて、整復 した事もある」
「せいふく?」
「看護師だったんだ。関節を嵌めたんだよ」
あの女、看護師してたのか。
それで何で、自分の子を痛めつける様な事が出来たんだ。
「何度か首も絞めたと言ってた。一度、心肺蘇生をした事があって、それからは絞めてないとも・・・」
「殺してやる!!」
「落ち着け。もう欠片も残ってねえよ」
美月の15年は、地獄だ。
自分を苦しめるだけの母親と、2人きりの、逃げ場のない。
「聞かなきゃ良かっただろ」
「・・・・・・いや。親父はそれ、どうやって知ったんだ」
「母親 から聞いた」
そうか。
閉じ込められて病院にも行ってなかったんだ、知ってんのはオカアサンだけだよな。
「俺がどう殺 ったかも聞きてえか?」
「いらねぇ。ゴミ処理方法に興味ねぇよ。欠片も残してねぇんだろ?」
「ああ。オカアサンだったモノは、この世に残ってない」
だったらいい。
親父に任せたんだ、俺や新名 が殺 るより惨 い方法だったに違いないのだから。
「そうか・・・ああ、アレの心肺蘇生は5度成功して、6度目に失敗したって事だけ教えといてやる」
「・・・そうかよ」
いい笑顔で言う事か?
「そういや、美月の前で喫 ってねぇだろうな?」
「・・・・・・・・・ぅん?」
「やっぱり喫ったんだな?美月がパパも煙の魔法が使えるとか言ってから、しまったって顔してたぞ。口止めしたのか?」
「し、してない!ちゃんと正直に言って謝るって約束を・・・すまなかった麗彪。みっちゃんが早起きして、見られちまったんだ。その1回だけだ。本当にすまなかった」
美月が煙草 に興味を示したらどうすんだ。
副流煙も美月の身体に悪いだろうが。
肺癌で死ぬなら独りで逝きやがれ。
親父に説教をし、しっかり反省させた頃、美月たちが榊家に帰ってきた。
俺の膝に座り、滑り台がどんなに楽しかったか親父たちに話す美月。
話を聞きながら、無意識に美月の腕や脚を撫でていたら、駿河と片桐から「美月くんが減ります」と言って止められた。
煩 ぇ、お前らも知ったらこうしないではいられなくなるからな。
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