219 / 300
多忙とドラゴン
【麗彪 side】
なんでこんなに忙しいんだ。
昼間は表の仕事、夜は裏の仕事で美月 を愛でる時間が足りない。
美月が首元を気にする事がなくなってきた様だったからまだ良かったが、一緒に寝る暇もないのは問題だ。
「美月はどうしてる」
『今日は午前中に時任 の料理教室、午後は俺とお買い物に行って、おやつにプリンアラモードを食べました。夕食を食べた後、お風呂に入って、今はDVD観てます〜』
片桐 の運転する車で移動中、駿河 からの報告を聞く。
今夜は帰れるはずだが、美月が寝た後だろうな。
「首は気にしてたか?」
『いえ、大丈夫です』
そうか、取り敢えずは安心だ。
美月の声が聞きてぇな。
DVD観てるって言うけど・・・。
「美月に電話しても大丈夫そうか?」
『ずっとスマホ握りしめてますよ〜』
駿河との通話を切り、美月の番号にかける。
2コールもしない内に・・・。
『麗彪さんっ!』
「美月。なにしてる?」
嬉しそうに、俺を呼んでくれる声。
疲れや不快感が一気に浄化されるな。
『あのねっ、地下からドラゴンが出てきてね、今たいへん!』
「ふっ・・・そっか、大変だな。誰か助けてくれそうか?」
最近、ファンタジー物の映画とかよく観てるんだよな。
美月は動物全般が好きだが、恐竜やドラゴンもカッコよくて好きらしい。
リアルなCGを駆使した映像を観て、たぶんドラゴンはどこかにいるって信じてるっぽいんだよな。
『戦う準備してるよ!でもドラゴンの方がすっごい大きくてすっごい強いの!』
「それ、人間じゃ太刀打ちできねぇだろ。恐くないのか?」
俺の問いかけに、ほんの一瞬考えた様だったが、美月ははっきりと言った。
『恐くないよ!だってぼくには麗彪さんがいるもん!』
俺は体長数十メートルのドラゴンにも勝てるって思われてんのか。
まあ、美月を護るためなら何としてでも勝つけど。
「そうだな。もしドラゴンが俺の美月を狙ってきても、返り討ちにしてやる」
『ふふっ、麗彪さんはドラゴンよりもっとかっこよくて、もっともっと強いもんねっ!』
「まあな」
次の目的地に着き、美月との通話を終える。
寝ちまう前に声が聞けて良かったが、聞いたら今すぐ会いたくなるんだよな。
抱きしめて、キスして、今日はどんな事が楽しかったのか直接聞いて・・・。
「帰りてぇ」
「同感ですが、降りてください。私は車を停めてから行くので、それまで新名 と手を繋いでいていいですよ」
「お手をどうぞ、坊 」
「やめろ」
ああ、本当に、美月以外の全てが邪魔だな。
ともだちにシェアしよう!

