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上書き

美月(みつき)side】 今年も、ぱぱのお(うち)にみんなで行って、新年のご挨拶をして、お年玉もらっておつかいに行って、お泊まりして帰ってきた。 そしたら、駿河(するが)さんがハツユメでナスの煮浸しを食べたって話してて・・・。 「初夢、正月2日、または元日の夜に見る夢・・・ナスの煮浸しの夢見たら、どおなるの?」 「ん?一富士(いちふじ)二鷹(にたか)三茄子(さんなすび)って言って、富士山とか鷹とか茄子(なす)の夢を見るといい事があるらしい」 「ふぅん・・・」 お風呂から出て、ドライヤーしてくれながら麗彪(よしとら)さんが教えてくれた。 じゃあ、駿河さん、いい事があるんだね。 「ぼく、なんの夢見たっけ・・・」 麗彪さんの夢だった気がするけど・・・よく覚えてない。 いっしょに、なんか食べてた気がする・・・。 「麗彪さんは、初夢見た?」 「んー・・・見た様な、見てねぇ様な・・・」 麗彪さんも、覚えてないみたい。 ドライヤー終わって、いっしょにベッドに入って、まだ眠くないから、ベッドに座って本を読む事にした。 本を読みながら、また夢の事を考えちゃう。 夢って、覚えてるのと覚えてないの、ある。 楽しいのとか、美味しいのは、ちゃんと覚えてたいのにな。 「美月」 「・・・ん?」 麗彪さんが、ぼくを呼びながら手を掴んだ。 どおしたの? 「夢は夢だ。どんな夢を見ても、美月は俺と一緒だからな」 優しい声と、大好きな麗彪さんの笑顔。 ぽかぽかする。 日向ぼっこしてる時みたい。 「・・・あのね、麗彪さん」 「ん?」 ちゃんと覚えてないのに、考えちゃう夢がある。 まっ白とまっ黒の、夢。 その夢を思い出そうとしてると、いつも、麗彪さんがぼくを呼んで、手を握ってくれた。 きっと、あれは恐い夢なんだよね? 思い出さない方が、いいんだよね? 「手、かして?」 たぶん、覚えてないのは、忘れたいからなんだ。 それでも、考えちゃうから。 だから・・・。 「美月!だめだ!」 掴んだ麗彪さんの手をぼくの首に持っていったら、麗彪さんが止めた。 悲しそおな顔してる。 だめ・・・麗彪さんは嫌なの? ぼくの首に手をやるの。 「もお、考えないよおにしたいの」 「でも・・・」 「麗彪さんの手がいいの」 ごめんなさい、麗彪さん。 やな事させて、ごめんなさい。 だけど・・・。 「・・・わかった。上書きしてやる」 麗彪さんの手が、ぼくの首を撫でる。 ほっぺた撫でてくれる時みたいに、優しく、両手で包んで。 「・・・んっ」 撫でて、キスして、また撫でて。 ぼくが苦しくなくなるまで、冷たくなった手が、麗彪さんと同じ温度になるまで、ずっと、上書きしてもらった。

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