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マフラーと痕と加減
【麗彪 side】
「だからって・・・」
「あれはない」
「さすがにヤり過ぎでは?」
朝食の後、美月 が新名 と遊んでる隙に、昨夜の事を駿河 と時任 、片桐 に話した。
美月の首が痕だらけなのを見て、俺を責める様な目を向けてきていたからだ。
「仕方ないだろ、上書きのためとは言え、美月の細い首に手をかけた俺の身にもなれ。こっちの方が生きた心地がしなかった」
「あ〜・・・」
「まあ、それは・・・」
「心中お察しします」
なんとかここでの理解は得られたものの、新名には黙っておく事にする。
美月が受けた暴力の詳細も、新名には話していないし。
なんとなく、あいつは知りたくないだろうと思ったからだ。
知らなくても、美月の害になる様なもんは狐の勘で回避するから問題もない。
「あとは・・・カンナにも話しとくか」
午後になり、片桐に昼寝をさせようとした美月が寝落ちしたので、カンナの部屋へ行き昨晩の事を話した。
茶化す事なく最後まで聞いたカンナは、少し考えてから口を開いた。
「麗彪くんが首に手をかけて、パニックにはならなかったの?」
「落ち着いてる様に見えた。でも手は冷たかったな」
「そう・・・美月ちゃんて、マフラー平気よね?」
・・・そう言えば、マフラーやネックウォーマーは30着くらい持ってるし、俺や他のやつらが巻いてやる時も、抵抗するどころか嬉しそうだった。
「解離性健忘・・・首を絞められた時の記憶はないんだと思う。夢の内容も、覚えてないって言うより記憶にないから映像として見えてなかったんじゃないかしら。ただ、首元に手を持っていく動作だけ、体が覚えてたのかも」
「その動作から、記憶が戻る事はあるのか?」
俺が美月に言われるがまま首に手をかけた事が原因で、もし最悪の記憶を取り戻してしまったら・・・。
「わからない。何かがきっかけで突然思い出してしまうかもしれないし、このまま思い出さないかもしれない。様子をよく見ていてあげるしかないわ」
「そうか・・・」
出されたコーヒーを飲み、美月が起きる前に部屋へ戻ろうと立ち上がると、カンナがぱっと笑顔になり言った。
「美月ちゃんならきっと大丈夫よ。あたしたちが付いてるんだから。嫌な事思い出せなくなるくらい、構い倒してあげましょ。あ、あたしも一緒に行くわ。美月ちゃんの顔見たいし」
「ああ。・・・え、今から?」
「なによ、見られちゃ困る程痕付けまくったの?」
「・・・・・・」
「あんたねぇ、少しは加減ってもん知りなさいよ!」
見る前から怒るなよ。
見たらもっと怒る事になるんだから。
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