228 / 300
いやいやき
【美月 side】
「これは?」
「・・・ぃゃ」
「こっちか?」
「・・・ゃだ」
「これ?」
「・・・・・・・・・」
今日、みんなでご飯食べに行くから、これからお出かけする。
だから着替えようって言われたんだけど、ぼく、どおしたんだろ・・・着替えたくない・・・。
「どうした美月、出掛けんの楽しみにしてたろ?」
「・・・ぅん、お出かけしたい」
「じゃあ着替え・・・」
「・・・んぅー・・・」
ぼく、このままがいい。
麗彪さんの黒いスウェット。
ズボンはなんでもいいけど、麗彪さんのスウェット脱ぎたくない。
だけど、これはお部屋で着るやつだから、このままお出かけはできない。
わかってるのに、脱ぎたくないの。
「どうしました?」
ぼくが着替えないせいで、みんなお出かけできない。
片桐 さんが心配して見に来た。
「どれも着たくないんだと」
「そうですか・・・カンナが買ってきたワンピースとかは?」
「・・・違うのぉ」
「「違うんですね・・・」」
麗彪さんも片桐さんも、困っちゃってる。
ごめんなさい、ぼく、だめってわかってるのに、どおしてもやなの・・・。
「なにやってるんですか?」
「美月がどの服も嫌だって・・・」
時任 さんも来た。
どおしよ、ぼく、着替えなきゃ・・・でも、やだ・・・。
「美月、スウェッ トで行きたいのか?」
「ぇ・・・?」
時任さん、わかってくれた。
うん、ぼく、麗彪さんのスウェット着てたいの!
「これ、イヤイヤ期ですよ」
「「イヤイヤ期?」」
いやいやき?
麗彪さんも片桐さんも、ぼくも、時任さんを見て首を傾げる。
時任さんは僕の前にしゃがんで、僕の顔を見て言った。
「美月はスウェッ トがいいんだよな。でも、これじゃ外には出せないから、パーカー にするのはどうだ?」
時任さんが、今麗彪さんが着てる、濃いグレーのパーカーを摘んだ。
・・・ん、それも好きだから、それなら。
「うん。そっちにする」
「「さすが時任 」」
「感心してないで、麗彪さんは脱いでください」
「はい・・・」
ぼくはスウェットを脱いで、麗彪さんが脱いで渡してくれたパーカーを着た。
・・・うん、麗彪さんのにおいする。
「よしっ、お出かけ行こっ!」
「「「はーい」」」
ぼく、どおしてなのかもわかんないまま、わがまま言ったのに、麗彪さんも片桐さんも時任さんも、優しくしてくれてありがと。
・・・また、いやってなっちゃったら、ごめんね。
ともだちにシェアしよう!

