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ギャン泣き
【麗彪 side】
「あっ・・・・・・やっちまった・・・!」
最悪だ・・・俺とした事が・・・こんな失態を・・・。
「ど〜しました〜?」
すかさず駿河 が現れた。
お前、俺がデータ保存せずにPCを閉じたとか、その程度の事だと思ってるだろ?
そんなどーでもいい失敗じゃねぇぞ。
聞いて驚け・・・。
「美月 のブランケッ トにカップ1杯分のコーヒーこぼした・・・」
「なにやってんですか!?」
ほら、お前でも冷静ではいられないだろ。
そうなんだよ、これヤバいよな、ヤバ過ぎるよな・・・。
取り敢えず、急いで風呂場へ行き洗う。
・・・おい、これ、広がってねぇか?
てか、ウールってどうやって洗うんだよ・・・。
「おい時任 !助けろ!」
「時任 は美月くんとお買い物行ってますよ!どーすんですか!」
やばいやばいやばい・・・。
これ、買い替えた方が早いんじゃ・・・。
「駿河、同じもん買ってこい」
「無理です。それブランドの数量限定ノベルティなんで」
まじかっ!
よりによってこのブランケットは、美月をうちに連れて来た時に包 んでたやつ。
それ以来、ずっと美月が気に入ってほぼ毎日使ってるやつ。
洗濯する場合は時任 がすげー気を使って別にしてるやつ。
時任・・・なんとかしてくれよ・・・。
「ただいまぁー!」
美月が帰って来た・・・。
「美月おかえり、ちょっと話があるんだが、先に時任借りていいか?」
「え?なあに?」
「時任 、こっち〜」
「何やったんだ?」
駿河が時任を風呂場へ連れて行き、時任が持ってた買い物袋は俺が引き取って美月とリビングへ。
なんて言おう・・・。
「あの・・・美月、すまん、謝らないといけない事がある」
「謝る?なあに?」
美月は怒るか、赦すか、笑うか・・・。
どんなリアクションをしても、俺はつらい・・・。
「美月の大事にしてるブランケット、コーヒーこぼして汚してしまいました。申し訳ありません」
「ブランケット・・・?」
きょとん、としてから、ソファのいつもの場所にブランケッ トがないのを確認する美月。
時任がなんとかしてくれるにしても、あの惨状は見せられない。
見せてって言わないでくれ・・・。
「・・・どこにあるの?」
「い、今、風呂場で時任に洗ってもらってる。ごめん、元通りにならなかったら・・・新しい、もっとふわふわであったかいの、美月が欲しいの買うから・・・」
「・・・やだ」
ぞ・・・っとした。
やだって、どこが嫌だった?
コーヒーこぼした事か、洗ってる事か、元通りにならないかもしれない事か・・・。
「新しいのなんて、やだ・・・あれが好きなのっ!あれがいいのおぉっ!」
ですよね。
そもそも俺は、美月の大事な物を取り上げたりしないと約束したんだった・・・。
頼む時任!!
何としてでも元通りにしてくれ!!
いや、それより・・・。
「ゔあ"ー・・・っ、ぅゔっ・・・ぅあぁー・・・っ!」
「ごめん美月、本当にごめん。絶対元通り綺麗にするから、泣くな、ごめんな・・・」
美月が・・・これ、所謂 ギャン泣きってやつなんじゃないのか?
かわ・・・いや喜んでる場合じゃねぇ。
このまま泣き続けたら目も喉も腫れる・・・。
「よしよし、俺が悪かった、ほんとごめん。もうコーヒー飲まない、約束する。美月ぃ、泣くなよぉ」
美月を抱いて、背中を摩 りながら部屋の中を歩き回り、もう1人時任 が欲しいなと思った。
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