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アルバム
【麗彪 side】
美月 を連れて榊家 に来た。
美月のひな祭りだ。
居間の奥の和室に、とんでもない存在感の七段飾りが鎮座している。
その前にぺたんと座って、お雛様を見上げてる美月。
可愛いが過ぎる後ろ姿だな。
俺がスマホで写真撮ってる横で、親父と新名 も写真撮ってやがる。
「たまらんなあ」
「親父、一眼レフ 持ってたのか」
「ああ、しまい込んでたの思い出してな。昔はよく、お前たちの写真撮ってたんだぞ。あ、結婚おめでとう。親の同意書を用意しておいて良かった。みっちゃんまだ17歳だし」
「ありがとう。同意書 、どうやって手に入れたんだ?この世に欠片も残ってねぇのに」
「遺書と一緒に弁護士が預かってた・・・事になってる」
「自殺にしたのか?」
「病死にしたよ。結構長く監禁 してたしな」
親父は美月に会った翌月にはオカアサンを捕まえてたらしい。
つまり、あの女が地獄に居たのは丸1年と少し。
・・・まあ、どうでもいい。
もうこの世に欠片も残ってないヤツの事なんか。
「1番上が、おひな様と・・・?」
「お内裏 様です。2段目が三人官女、3段目が五人囃子、4段目が右大臣と左大臣、5段目が三人上 戸 、6段目は嫁入り道具、7段目はお輿入れ道具ですね」
「おこ、しいれ?」
「美月が麗彪さんの家に嫁に行く時に使うもんだ。御駕篭 と御所車 と重箱 」
「ふふっ、おべんと持ってくの?」
片桐 と時任 が美月を挟んで座り、七段飾りの説明をしてやってる。
・・・お前ら、すっかり美月のパパとママだな。
「みっちゃーん、こっち向いて」
「はぁい・・・ぱぱ、それなに?かっこいい!」
一眼レフに興味を示した美月を連れ、居間に移動して食事をする。
ちらし寿司、蛤 のお吸い物、だし巻き卵、唐揚げ、菱餅・・・。
食後は親父が持ち出したアルバムを見ながら雛霰 を摘む。
美月は親父の膝上だ。
「あっ、麗彪さん!可愛いっ!」
「5歳の時だな。こっちが7歳の駿河 、5歳の時任 、よっちゃんを抱っこしてんのが20歳 の片桐だ」
「駿河さんと時任さんも可愛い・・・片桐さんもかっこいい・・・新名さんとカンナさんは?」
「んー・・・あ、これが18歳の環流 だ。新名はもう少し後・・・お、いたぞ。榊家 に来た14歳の時だな」
「ぱぱどこ?」
「パパは撮ってる方だから・・・ああ、いた、ほらパパだ」
「・・・麗彪さん?」
「パパだよ。麗彪より格好いいだろ?」
写真なんて、いつの間に撮ってたんだ。
撮られてんの気付いてるのは片桐だけっぽいな。
環流は明らかな作り笑い・・・まだ榊家 に来たばかりで様子おかしい頃か。
新名・・・表情ねぇな。
あの狐笑いはいつからし始めたんだっけ・・・。
「子犬だあっ!可愛い!・・・あ、桜鬼 ?あと、こっちが楓鬼 でこっちが柃鬼 ?」
5年くらい前の、ジャーマンシェパード3姉弟 の写真だな。
「そうだよ。次のページはドーベルマン だが・・・どれが誰かはわかんねえな。みっちゃんの写真も、現像したらアルバムに入れような」
「うんっ!」
おい、子犬と俺の美月を並べて収めるなよ。
どうせなら、美月専用アルバムでも用意するか。
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