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エイプリルフール

美月(みつき)side】 今日はエイプリルフール。 嘘ついてもいい日、だって。 ぼく、ちょっと、間違えちゃった事があって、それも麗彪(よしとら)さんに話さなきゃいけないんだけど、その前にエイプリルフールしよおって、駿河(するが)さんと時任(ときとう)さんにどおすればいいか教えてもらったの。 「ねえ、麗彪さん」 「ん?」 起きて、まだベッドの上。 今日はお休みって言ってたから、朝ご飯ですよって呼ばれるまで、麗彪さんとごろごろしてる。 「あのね、ぼく・・・髪、短くしたいの」 「・・・え?」 あ、麗彪さん、びっくりした顔した。 ちょっと悩んでる? それから・・・。 「そ・・・っか、美月がそうしたいなら、後で・・・時任に、切ってもらおうな」 あれ、なんで切るのって聞かないの? 切っちゃだめって、言わないの? 麗彪さん、今の長さが好きなんでしょ? ぼくの髪を撫でながら、そんな、悲しそおに笑わないで・・・。 「あ・・・あと、えっと、指輪」 「指輪?また痛いのか?」 麗彪さん、心配してぼくの左手を確認してる。 痛くないよ、大丈夫。 「こ・・・これじゃ、なくて・・・新しい指輪、欲しいのっ」 ほんとは、もっと大きいダイヤの指輪が欲しいって、言わなきゃいけなかったんだけど・・・。 麗彪さんを見たら、少し考えて、それからまた悲しそおに笑って言った。 「いいぞ、どんなのが欲しいんだ?今から一緒に買いに行こう」 「だめえっ!!」 どおして? そんな事言うなって、言って・・・急になに言ってんだって、言ってよ・・・じゃなきゃ・・・。 「エイプリルフールなのぉっ!」 「え・・・あ、なんだ、そういう事か・・・」 麗彪さんが、ほっとした顔した。 ぼくは泣きそおなのに。 「ごめんね、悲しくなっちゃうよおなこと言って・・・」 「いや、びっくりしたけど・・・美月がそうしたいなら、俺は叶えてやりたいから。本当にそうしたっていいんだぞ?」 麗彪さんにぎゅって抱き付いて、麗彪さんにぎゅって抱きしめてもらう。 こんなに優しい麗彪さんに、あんな悲しそおな笑顔、させちゃった・・・。 ずきずきする・・・苦しい・・・もおあんな顔して欲しくない・・・! 「やだ・・・麗彪さんの好きな長さがいい・・・指輪も、この指輪じゃなきゃやだ・・・ぼくは麗彪さんが一番なのぉっ・・・ごめんなさいぃ・・・っ」 「あ、泣くなって、大丈夫だから。エイプリルフールってわかったし、美月の髪は長くても短くても可愛いし、指輪だってもっといいの・・・」 「指輪は外さないもんっ!」 「ははっ、だよな。それ気に入ってるんだもんな。指痛くなっても外さないくらいだもんな」 あ、麗彪さんが、いつもみたいな笑顔になった。 よかった、もお、あんな悲しそおな笑顔には、させないからね。 「エイプリルフールなんて忘れてたな。誰に教えてもらったんだ?」 「駿河さんと時任さん。言う嘘も、3人で考えたの。ほんとはね、髪と指輪の事言ったら、麗彪さんがやだやだーって言って騒ぐって・・・」 「誰が言った?」 「駿河さん」 やだやだーってなったら、エイプリルフールだよーって言って、なーんだって、なるはずだったの。 「あとね、もおいっこ、言う事あるんだけど」 「なんでもどーぞ」 「とらとらクッキー食べたくて、駿河さんのパソコンで注文したの」 とらとらクッキーは、前に新名(にいな)さんが見つけてお取り寄せしてくれた、トラの顔が描いてあるクッキー。 描いてあるトラが可愛いのとかっこいいの混ざってて、トラ模様の大きい缶に入ってて、味も美味しくて好き。 お店で売ってないから、パソコンで注文しないと食べられない。 「美月はあれ、好きだもんな」 「うん。みんなで食べよおと思って、数量10で注文したの」 「多いな・・・まあ、みんなで食えば・・・」 「でもね、後で時任さんが気付いたんだけどね、ぼくがポチってしたの、10缶セットの注文だったの」 「・・・くっ・・・あっはははっ!それじゃ100缶届くのか?美月ぃ、それはエイプリルフールってバラす前に言わなきゃダメだろ。さすがに100缶は嘘だってぇ」 麗彪さん、すっごく楽しそお! 良かったぁ! 時任さんが気付いたの、とらとらクッキーが届いてからだったから・・・。 受注生産だから返品キャンセルできないし。 だから、どおしよってなって、駿河さんと時任さんのお部屋と、片桐(かたぎり)さんのお部屋に慌てて詰め込んだんだぁ。 こんなに楽しそおなんだもん、届いた100缶見ても、怒らないよね・・・?

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