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にゃんくろ便
【麗彪 side】
事情があって、小さな事務所を偽装する事になった。
1日だけ。
ちょっとした罠に必要で、1日だけだし俺を含めた適当なメンツでやり繰りしようと思ってたんだが・・・。
「ぼくもやりたいっ!」
下準備で駿河 が衣装とか小道具を用意してるのを美月 に見られてしまい、苦し紛れに「会社ごっこするんです〜」なんて言いやがるから、案の定興味を持ってしまった。
いや、だめだろ、表向きはただの小さな事務所だが、誘い込んだターゲットを裏で締め上げる予定なんだぞ。
そんな場所に美月をいさせるなんて・・・。
「それじゃ、美月ちゃんはあたしと一緒に事務員役ねぇ」
「事務員頑張るぅ!」
「いや美月は社長秘書だ」
・・・はっ、思わず余計な事を言ってしまった。
美月の社長秘書が見たい・・・って違うだろ。
参加させちゃだめだろ・・・。
「小さい事務所なので秘書は2人も雇えませ〜ん」
「なら駿河 が事務員に降格しろ」
「ええ、俺スカート似合うかしら〜」
美月とカンナと駿河がきゃっきゃと楽しそうに衣装を決めているのを眺めながら、諦めてリビングからダイニングへ移動し、時任 と片桐 に裏での動きを確認する。
「こうなってしまったからには仕方ない、絶っっっ対に美月に悟られない様に動け」
「「わかりました」」
事務所の裏で・・・と思っていたが、場所を移してからの方がいいだろう。
何処か適当な場所は・・・。
「俺が使ってる倉庫の1つが近くにあるので、そこを使ってください」
やり過ぎる新名 は裏担当から外していたが、場所を提供してくれるらしい。
・・・新名の倉庫、か。
「そこ、掃除済みか?」
「いいえ、散らかしたままです」
「・・・そりゃ、さぞ効果的だろうな」
新名の倉庫 にナニが散らかってるのかは敢えて聞かず、そのまま使用する事に。
時短にもなるだろうしな。
「帰りに掃除してきますか?」
片桐は何でも綺麗に片付けるからな。
だが掃除なんてしてる場合じゃねぇぞ。
さっさと済ませて、美月にバレない内に撤収しねぇと。
「ちょっと、やめてくださいよ、拘 って散らかしてあるのに」
どんな拘りだ・・・ちょと見たい気がしないでもない。
「拘ってんのかよ・・・行きたくねえな・・・」
時任がうんざりした様な顔でため息をついた。
おい、やめろ、ウチにはそーゆうのに敏感な子がいるんだ・・・。
「時任さん、どおしたの?大丈夫?」
ほら、ダイニング 来ちゃったじゃねぇか。
時任を心配して駆け寄ってきた美月をすかさず捕まえて、膝上に座らせる。
「時任は宅配員役だから、出番が少なくて残念なんだと」
「そおなの?」
「事務所に荷物を引き取りに行く役だ」
「重たいので私も一緒に宅配員役です」
「にゃんくろ便の人やるの?」
「はい、にゃんくろ便さんです」
駿河がネットで買った物を運んでくるにゃんくろ便。
荷物はロビーでコンシェルジュが受け取って、時任か片桐が上まで運んでくるんだが、とらとらクッキーの受け取りに美月も付いて行ったらしく、その時に見かけたらしい。
それ以来、なぜかにゃんくろ便に興味を示している。
・・・まさか美月、筋肉が好きなのか?
「俺だって筋肉あるぞ?」
「ん?知ってるよ?どおしたの?」
「美月が愛でていい筋肉は俺のだけだ」
「めでて?」
ジムでのトレーニングメニュー、増やすか・・・。
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