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ひとりの夜
【美月 side】
「ごめんな美月、何とかして早く帰ってくるから・・・」
「大丈夫だよ。お仕事、頑張ってね」
麗彪 さんたち、明日までみんなお仕事なんだって。
片桐 さんと新名 さんとカンナさんは先に行ってて、麗彪さんと時任 さんはぼくと夜ご飯食べてから行くって。
ほんとはぱぱのお家にお泊まりに行くはずだったんだけど、ぱぱのお家も忙しくなっちゃったからお泊まりできなくて、駿河 さんはぱぱの方のお手伝いに行ってる。
「なんかあったら電話しろよ?」
「うん」
麗彪さん、心配そお。
ぼく、ほんとに大丈夫だよ?
「眠くなったら寝るんだぞ?無理して起きてなくていいからな」
「ふふっ、大丈夫だってばぁ」
ぼく、来月になったら18歳になって、大人なんだよ?
もおひとりでお留守番なんて平気なんだからね。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
麗彪さんにちゅってキスして、玄関でお見送りする。
かちゃんって鍵が閉まって、ぼくはお家でひとりになった。
・・・そおいえば、夜にひとりなの、麗彪さんとこにきてから初めてかも。
「なにしよおかな・・・」
麗彪さんとお風呂に入ってから夜ご飯食べたんだけど、まだ8時半くらい。
・・・いっぱい遊べる!
「なにして遊ぼお・・・」
ひとりで遊ぶって、どおやるんだっけ。
前は、なにしてたっけ・・・。
「・・・っ、もお、あのおうちはないもんっ!」
ぼくのお家 はここ。
麗彪さんといっしょに住んでるここが、ぼくのお家。
綺麗で、あったかくて、涼しくて、明るくて、お菓子もあって・・・。
「とらきちと、まどかと、海ちゃんもいるもんっ!」
リビングのソファにみんなを座らせて、おもちゃ入れからワニのおもちゃを持ってくる。
テーブルに置いて、おくち開いて、まず1本・・・。
───ガシャンッ!
「ひう・・・っ!!」
なんで最初のでがしゃんなの・・・。
酷いよぉ・・・。
「別ので遊ぼ・・・」
おもちゃ入れをごそごそしたら、前に駿河さんが途中でやめちゃったパズルの箱が出てきた。
絵が描いてない、全部黒い、1000ピースのジグソーパズル。
箱を開けて、外側のふちになるピースだけ探してテーブルに並べる。
形を見ながらちょっとずつ繋げてって・・・。
「外側だけ出来た・・・けど、もおいいや・・・」
また、おもちゃ入れをごそごそ。
そおだ、ジェンガの練習しよ。
パズルの黒い枠の真ん中にジェンガを積んで、どんどん抜いてどんどん積み上げて・・・。
「あっ・・・崩れちゃったぁ・・・」
次のおもちゃ・・・難しい形の知恵の輪がいっぱい出てきた。
ラグマットの上に並べて、1個ずつ挑戦してく。
「全部はずせたけど・・・戻せなくなっちゃった・・・」
どれとどれが、セットだったんだろ・・・。
仕方ないので、ばらばらになっちゃった知恵の輪はそのまま置いといて、今度はぱぱの赤い車で遊ぶ。
麗彪さんのお部屋に車を取りに行って、赤い車とモンスタートラックも持ってリビングに戻った。
赤い車で遊んでから、モンスタートラックでお家の中を走って見まわる。
・・・なんか、静かだな。
リビングにモンスタートラックと戻って、DVDを観よおっと。
「どれ観よおかな・・・」
片桐さんに買ってもらったドラゴンが冒険するやつ、観よ。
頑張るドラゴンの子供を助けてくれる、おっきなドラゴンの先生が1番かっこよくて好き。
そおだ、ジュース持ってきて飲みながら観よ。
あ、クッキーあった、これも持ってこ。
リビングに戻って、とらきちたちと並んで座って、お気に入りのブランケットぎゅってしながら、ぼくはひとりの夜を過ごした。
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