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脱線しりとり

麗彪(よしとら)side】 「美月(みつき)乗ってないとか()える」 「それは俺の台詞(せりふ)です」 「はいはい2人とも仲良くね〜」 「もういっその事、寝ててください」 後部座席に俺と新名(にいな)が座り、駿河(するが)は助手席。 ドライバーの片桐(かたぎり)が小さくため息をつきながら車を出した。 「向こうは美月がいるから楽しいんだろうな」 「お嬢さえいればどんな場所でも天国です」 「うわ〜美月くん大好き度が異常に高い2人がこっち来ちゃうとはね〜」 「お願いですから後ろで暴れ出さないでくださいね」 振り返ると、リアガラスの向こうに時任(ときとう)が運転する後続車両。 あれに美月が乗ってる。 「時任のやつ、やたら喋ってんな」 「・・・とんてき・・・・・・す・・・・・・すんた・・・ずんだシェイクか、あれうまいか・・・」 「こら新名、唇読むのやめなさ〜い」 くそ、美月が見えねぇな。 美月はなに話してんだ? ずんだシェイクって、前にモールで飲んだやつか。 ・・・あれ、美味(うま)いか? 「車に乗る時、縛り付きしりとりやるって言ってましたけど、それじゃないですか?」 「しりとりか・・・」 トンテキとずんだシェイクの間は何だったんだ。 美月は何て言ったんだ? 「どんぶり・・・・・・じゃあどんもの・・・・・・てんどん」 「しりとりじゃなくなってんじゃねぇか」 「2人とも、時任の運転の妨げになるから前向いて座りなさ〜い」 それはまずい。 美月が乗ってんのに事故でも起こしたら大変だ。 「こっちもしりとりしますか?」 「いいね〜何縛りにします〜?」 「お嬢が好きなので動物縛りにしましょう」 「じゃあ、虎」 美月が一番好きな動物だ。 「ラッコ」 駿河がすかさず答えた。 時計回りとかじゃねぇのかよ。 「コヨーテ」 片桐、確か美月にコヨーテとジャッカルの見分け方を教わったとか言ってたな。 俺はまだ教わってねぇんだが? 「天竺鼠(てんじくねずみ)」 「・・・なんだそれ?」 「モルモットの事です。お嬢に教わりました」 お前も美月に教わってんじゃねぇよ。 次はみ、から始まる・・・。 「美月」 「こぉら、美月くんを動物扱いしないでください〜」 「・・・ミミズク」 「クジラ〜」 「ラクダ」 「だ・・・ダチョウ」 「兎と言えば美月だろ」 美月が兎だったらどの兎だろうな。 白い子兎か・・・。 「お嬢はネザーランドドワーフだと思います」 「ミニレッキスでは?」 「俺的には垂れ耳のイメージあるんですよね〜、ホーランドロップとか」 「お前ら兎の種類に詳しいな」 向こうもこんな感じに脱線して、しりとりじゃなくなってんのかもな。

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