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⭐︎番外編⭐︎片桐さん観察日記

美月(みつき)side】 朝起きたら、片桐(かたぎり)さんが帰って来た。 ・・・あれ? 「おかえりなさいっ」 「ただいま帰りました」 「お風呂、入ってきたの?」 「あ、はい・・・大掃除をしてきて汚れてしまったので」 片桐さんはお仕事に行くと、カンナさんのとこか新名(にいな)さんのとこでお風呂に入ってから帰ってくる。 いつもみたいに、お(うち)のお風呂に入ればいいのに。 「今日はもお、お休みだよね?」 「はい」 だって、前髪下ろしてるもんね。 いつも石鹸のいい匂い、前髪下ろしてる片桐さん、かっこいい・・・っと。 「何を書いてるんですか?」 「観察日記だよ」 「ああ、夏休みの宿題ですね」 みんなで朝ご飯を食べて、麗彪(よしとら)さんたちはお仕事に行った。 ぼくは片桐さんとお留守番。 いっしょにお皿を洗ったら、片桐さんはお掃除を始めた。 片桐さんはお掃除がとっても上手。 ふわふわの、ほこり取るやつで上の方から初めて、掃除機かけて、窓も拭く。 あっという間に終わっちゃった。 ぼく、おもちゃ片付けたのと、窓をちょっと拭くしかお手伝い出来なかった・・・。 「さすがお掃除のプロ・・・っと」 「・・・もしかしてそれ、私の観察日記ですか?」 「うん。みんなの観察日記書くの」 「そうなんですね」 片桐さんが優しく笑った。 ぼくもいっしょににこってなる。 「・・・あっ!」 「どうしました?」 「ケガしてるっ!」 「え・・・あっ」 左手の甲、ぴって線みたいに赤くなってる。 もお止まってるけど、これたぶん、血が出るケガだ。 「何かに引っ掛けてしまったんですかね、でももう・・・」 「救急箱!」 カンナさんが、ケガした時とか、頭とかお腹が痛い時のお薬を入れてくれてる救急箱。 消毒液と絆創膏も入ってる。 「だ、大丈夫ですよ、このままで・・・」 「だめだよ!これ、痛いもん・・・絆創膏、大きいのして、服とかお水とか当たらないよおにしないと・・・痛いもん・・・っ」 ずっと、ひりひり痛いんだよ。 ぼく、知ってるから。 片桐さんが痛いの、嫌だよ・・・。 「美月くん・・・そうですね、絆創膏をお願いします」 「うんっ!」 片桐さんが、お掃除した後手は洗ったから消毒はしなくていいって。 ケガが隠れる大きさの絆創膏を選んで、そおっと貼る。 「ありがとうございます」 「うん・・・お皿洗う前に気付けば良かった・・・ごめんなさい・・・」 お水も、洗剤も、すっごくしみて痛かったはず。 ごめんね、片桐さん・・・。 「美月くんが謝る事は何もないですよ!私も痛くなかったので気付きませんでしたし・・・心配してくれてありがとうございます」 「い、痛くなかったの?」 「はい。全く」 片桐さんの優しい笑顔。 嘘じゃない、みたい。 ほんとに、痛くなかったのかな・・・。 「片桐さん、すごいね・・・優しくて強くて、かっこいい!」 「そんなに褒めてもらえるとは・・・嬉しいです」 ぼく、片桐さんみたいに大きくなりたいってずっと思ってた。 今もそおだけど、背だけじゃなくて、優しくて強くてかっこよくて、お掃除も上手な、片桐さんみたいになりたい・・・!

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