272 / 300
なんで来た
【麗彪 side】
「麗彪さん」
「ん?」
「綾 ちゃん、遊びに来るって」
「・・・はあ?」
美月 がスマホで誰かとやり取りしてんなと思って見てたら、唐突に言われた。
親父とだと思ってたのに、まさか綾だったとは・・・。
「いつ来るって?」
「えっとね、もお駅からタクシー乗ったって」
「は?駅って東京 の?ウチに来んの?」
なぜ前もって連絡してこねぇんだよ。
俺がマンションに居なかったらどうするつもりだったんだ。
電話するか・・・。
「なんで来た」
『なんや挨拶もなしにぃ。新幹線でやでぇ』
「そーゆう事聞いてんじゃねぇのはわかってんだろ」
『あっは、笑うとこやろぉ。美月ちゃんと遊びとぉて来たに決まっとるやぁん』
「西に帰れ」
『酷ぉ!もぉマンション着いたぁ。下りてきてぇ?美月ちゃんとお迎え来てぇ』
通話をぶちりと切り、額に手を当ててため息をつく。
頭痛が・・・。
「麗彪さん、大丈夫?」
「急に具合が悪くなってきた気がする」
「え?ベッド行く?横になった方がいいよ?綾ちゃんはぼく迎えに行・・・」
「一緒に行く」
来ちまったもんは仕方ねぇ。
用件聞いてさっさと帰ってもらおう。
美月と手を繋ぎ、エレベーターに乗ってエントランスへ向かう。
そこには、デカいキャリーケース片手にコンシェルジュとへらへら話している綾がいた。
「綾ちゃんっ!」
「美月ちゃぁんっ!」
あ、こら、ハグすんな!
ここは日本だから俺以外とハグしちゃいけません!
美月はなんで綾なんかに懐いたんだ・・・。
「迷子にならなかった?」
「うん、平気やったぁ。今日からお泊まりするから、よろしくねぇ」
「わぁい!」
「ウチ泊まんのかよ!?なら今度こそ新名 んとこ泊まれ。あいつ仕事で帰って来ねぇから」
「家主おらんのにベッド使われへんやろ。また合宿ごっこしよなぁ」
「するぅ!」
「時任 キレんぞ」
まじで頭痛してきた・・・。
嬉しそうに綾のキャリーケースを引いてやる美月と西の蟒蛇 を連れて、俺は諦めの境地でエレベーターへと乗り込んだ。
ともだちにシェアしよう!

