273 / 300
なんか、ちょっと、嬉しいの
【美月 side】
ぼくと麗彪 さんと綾 ちゃんとカンナさんで、並んで正座してます。
お買い物から帰ってきた時任 さんに「そこに並んで座りなさい」って、言われちゃったから。
「たった1時間でどうやったらここまで散らかるんですか?」
麗彪さんが。
「俺がソファどかして・・・」
カンナさんが。
「あたしがゲーム始めてぇ・・・」
綾ちゃんが。
「俺が買 ぉてきたお土産のお菓子広げてぇ・・・」
「広げ方!なんで全部開けてそこらじゅうにばら撒く必要があるんです?」
あ、それはぼくが・・・。
「あの、ぼくが、全部食べてみたくて、開けちゃいました・・・」
「・・・確かに見た事ない菓子ばっかだからな。美月がやったなら菓子 は仕方ない」
あれ、ぼくだけゆるしてもらえた・・・?
「おい時任 、美月にだけ甘過ぎないか?」
「美月ちゃんだってゲーム一緒にやったのよ?」
「せや!ソファどかしたんもゲーム始めたんもお菓子広げたんも美月ちゃんや言 うたら、俺ら赦してもらえんちゃう?」
「美月に罪をなすり付けるな!」
綾ちゃん、時任さんに叱られて、しゅーんってしちゃった。
そおだよ、ぼくがやりたいって言って、みんないっしょに遊んでくれただけだもん!
「ぼくが、ソファとゲームとお菓子やりました!ごめんなさい!」
「美月、やってもない罪を告白するな。それに、お前は悪くないんだから謝るな。麗彪さんにも言われただろ」
「あっ・・・」
そおだった。
麗彪さんに、もお誰にも謝らなくていいって、本当に悪い事しても、謝らなくていいって、言われたんだった。
「そろそろ赦してあげたら〜?美月くんの脚が痺れちゃいますよ〜」
時任さんといっしょに帰って来てた駿河 さんが、買ってきた物を冷蔵庫にしまってからリビングに来て言った。
え、もおいいの?
前に麗彪さんが「時任 の小言は最低1時間」って言ってたのに。
「・・・美月、立っていいぞ。麗彪さんは雑にどけただけのソファをちゃんと寄せてください。カンナと綾は床に撒いた菓子を拾いなさい」
「「「「はい・・・」」」」
言われた通り、麗彪さんはソファをちゃんと部屋の端っこに寄せて、カンナさんと綾ちゃんはラグマットの上にこぼしちゃってたお菓子を拾い始めた。
ぼくは、駿河さんとダイニングテーブルのイスに座って、時任さんが用意してくれたジュースを飲む。
・・・ぼく、これじゃだめな気がするよ?
ぼくも、お手伝いしなきゃ・・・。
「美月、あの菓子全部食ったのか?」
「ん?えっと・・・全部ちょっとずつ・・・いっぱい・・・食べました・・・」
ちょっとずつって、嘘になっちゃう。
全部合わせたら、いっぱい食べたもん。
・・・お腹いっぱいだし。
「今夜のデザートはナシ」
「ふぇ・・・っ!?」
夜ご飯の後の、デザートなし?
だって、夜のデザートにするって言って、時任さんがいちごシャーベット作ってくれたのに?
なし?
「菓子の食べ過ぎは反省しなさい」
「はぃ・・・」
綾ちゃんみたいに、しゅーんってしちゃうけど、なんでだろ。
なんか、ちょっと、嬉しいの。
ともだちにシェアしよう!

