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俺に助けを求めろ
【麗彪 side】
「はあああー!?家業がバレたあ!?」
「煩 ぇ、美月 が起きんだろが」
リビングで絶賛合宿ごっこ中。
チップ代わりのチロルチョコとスリーカードの手札が、ラグの上に敷いた布団の上に散らばっている。
ポーカー中に寝落ちした美月にブランケット をかけてやりながら、何気なく綾 に最近あった大事件の話をしていた。
「すまん・・・て、美月ちゃん起きひんやん。眠り深いんやなぁ、かわえぇ・・・」
「俺と密着してると騒いでも起きねぇんだよ」
「密着言 う程してへんやん」
寝転がってポーカーしてた時はカードを握っていた手が、うとうとし始めると同時に俺のTシャツを握っていた。
だからそろそろ寝るだろうなとは思っていたが、ぱらっとカードを撒くと同時に俺に擦り寄って目を瞑るのを見て、頬を緩めずにはいられなかった。
「これからする」
「俺にもさしてぇな」
「ふざけんな」
規則正しく呼吸する華奢な身体をそっと抱き寄せ、腕の中に閉じ込めてその温もりを堪能する。
美月、なんでこんなに可愛いんだ。
「なんか・・・ちょっと恐いねんけど」
「は?お前が?恐い?なにが?どうした?」
「いや、俺やて恐い時くらいあんで。だって・・・あん時と同じやし・・・」
ああ、前に来た時のアレか。
「最近はもう、見てねぇよ」
「そぉなん?ほんま?俺のせいでまた思い出したりせぇへん?」
「それ心配すんなら来んなよ」
「だぁって・・・美月ちゃんお前なんかとほんまに結婚してもぉて、心配やってんもん。顔見て元気か確かめたかってん。それが・・・まさか家業バレとるとは・・・」
籍を入れてすぐ、綾から連絡があった。
もの凄い剣幕で「なにガチで結婚しとんねん!!美月ちゃん未成年やぞ!!」と。
嫁認定はしていたが、籍さえ入っていなければ、まだ美月の事を逃がせるとでも思っていたのだろう。
「親父さんも思い切った事しはるわぁ、死体に遺言書かせるやなんて」
「おかげで正式に夫婦になれた」
「こんな事なら、大阪来た時に奪ってしもぉたら良かったなぁ」
「させるかよ」
時任 が散らばったカードとチロルチョコを片付け、美月が寝たのを確認したカンナもタオルケットを引き寄せて寝に入るらしい。
酒が入った駿河 はその隣で既に寝ている。
「・・・ぅ・・・っ」
「・・・え?」
「美月ちゃん・・・?」
まさか、また?
綾がきっかけか?
くそ、無理にでも追い返しとけば・・・。
「ゃだ・・・でざ・・・とぉ・・・っ・・・ぱ・・・だりぉ・・・っ」
「「?」」
でざ?
だり?
俺と綾が困惑していると、時任が俺たちにタオルケットをばさっとかけながら言った。
「晩飯のデザートに出すはずだった苺シャーベットをナシにしたから、パンダリオンに助けを求めてるんじゃないですか?」
「ああ・・・」
「え?なに?ぱんだりおん?なんやそれ?」
美月の寝顔を覗き込むと、パンダリオンが助けてくれたのか、表情が和らぎなんなら幸せそうな顔で眠っている。
「なあ、なんやねんぱんだりおんて?」
「明日美月に聞け」
パンダリオンでなく俺に助けを求めろよ。
美月を抱きしめる腕の力を少し強め、俺も瞼を閉じた。
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