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楽しみやな
【綾 side】
「本気で言 うてますの?榊 の坊 ちゃんから嫁はん盗るなんて」
公園で美月 ちゃんに告白してから、適当に時間を潰して五十嵐 らを待っていた。
今は五十嵐 が手配したホテルでルームサービスを食ってる。
「夏休みやー言 うて飛び出してったかと思たら、他所 の嫁はん口説き落としたいから助けに来てーって、なんなん?」
「ねーちゃん、そんな言 うたら綾ちゃん泣いてまうて。フラれてもーたんやろし」
双子の伊吹 紅 と蒼 が、俺の皿から好物のニンジンを盗 っていきながら揶揄ってくる。
フラれてないっちゅぅねん。
まだ・・・。
「伊吹姉弟 、ニンジン欲しいんなら綾ちゃんのやなくて僕の皿から持ってき」
堂本 が自分のニンジンを双子の皿にのせてやる。
・・・よっちゃんも、こんな感じに美月ちゃんくれたりせんやろか・・・ないか・・・。
「さすがにマズいんちゃう?麗彪 さんの嫁さんて、雅彪 さんかて可愛がっとんのやろ?処 されんでわしら」
五十嵐が食べ終えた皿を片付けながら言った。
そう、下手 すれば東から出られなくなる。
だからこそ・・・。
「運動会で正々堂々戦って勝つんや!」
「「「「いやいやいやいや」」」」
負けたら潔く美月ちゃんは諦める。
諦めたくないから、絶対に勝たねばならない。
「綾ちゃんマジになるとか、そんなかわえー子なん?」
「ねーちゃんより可愛いんは確実やな」
足癖の悪い紅が蒼を蹴った。
紅蒼 も可愛いで。
まあ、美月ちゃんの可愛いは次元が違うけどな。
「わしと堂本は会ったな。空港で」
「ええ。なんや、僕らみたいのと一緒におったらあかん感じの子ぉやったね」
確かに。
あんな、純粋無垢でふわふわでキラキラでほっこり甘い子は、極道 なんかに飼われたらいかん子や。
それわかってても、傍に置いときたいって思ってしまう子ぉやねん。
「・・・ん?なんや皇 、なに書いたん?」
いつも通り黙って飯食ってた皇が、ポケットからメモ帳を出して何か書いている。
珍しく言いたい事があるらしい。
「えぇと・・・『籠から逃してやるんじゃなかったの?』・・・まあ、最初はそのつもりやってんけどなぁ・・・一緒におったらよっちゃんの気持ち良ぉわかってもぉて・・・しかもあの子、パンダリオン好きやねんて」
「「「「ぱんだりおん?」」」」
まあ、知らんよな。
と思ってたら、皇がノーパソ出して『不屈のEDF』のホームページを表示させた。
よくアニメのタイトルわかったな・・・って、皇は知ってたんかな?
「すーちゃん、これ知ってたん?」
紅の質問にこくりと頷く皇。
なんや、アニメとか見るんやなこの子。
美月ちゃんの事は皇に調べてもらった。
逃す手筈も頼んでたんやけど・・・。
「会って話せば、お前らも好きんなるて。楽しみやな、運動会」
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