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玉入れ
【雅彪 side】
まったくうちの子たちは、いい歳して運動会をしたいだなんて。
・・・張り切って準備しちまったじゃねえか。
グラウンドを借りようかとも思ったが、外じゃ暑くてみっちゃんが熱中症になっちまう。
だから、空調設備もあるこのデカい体育館を借りた。
榊家 は白組、九十九家 は紅組で、競技は予定通り、玉入れ、リレー、綱引き、障害物競走、2人3脚。
先ずは肩慣らしの玉入れからだ。
カゴはそれぞれ、藤堂 と柳 に支えさせている。
「カゴに入れた玉の数がそのま組の得点になるからな。おし浩太 、合図出せ」
「はい・・・って、これ拳銃 っすけど、誰に向けます?」
「馬鹿野郎、空砲だ。上向けろ」
念のためみっちゃんの耳を塞ぎ、浩太の空砲 を待つ。
ぱあん、と乾いた音と共に、一斉に飛び交う玉。
みっちゃんは大喜びで、ポンポン振りながら応援してる。
みっちゃんが楽しいなら何でもいいが、麗彪 が負けたらこの子は俺のもんだ。
この運動会、色んな意味で楽しめそうだな。
「ちょ、綾 ちゃん暴投!白組 のカゴに入ってもぉてるやん!」
「入りゃええやん!」
「減点になりますって!」
「駿河 、玉拾って時任 と片桐 に渡せ!」
「了解〜!」
「麗彪 さん!投げた玉が全部俺に降ってきてるの気のせいじゃないですよね!?」
騒がしいやつらだ。
まあ、みっちゃんがそれ見て楽しそうだからいいか。
白組は片桐と時任が、紅組は五十嵐 と伊吹 姉弟が点を稼いでいる。
・・・こりゃ、白組劣勢か?
いや、綾が白組のカゴに赤玉入れちまってるからいい勝負になってるかもな。
「みんなすごいね!もおカゴがいっぱいになっちゃう」
「おう。そろそろ終了の合図だな。みっちゃん、耳塞ぐぞ」
浩太が時計を見ながら空砲を撃つ。
カゴに入りそびれた玉がぱたぱたと床に落ち、藤堂と柳がカゴを傾けた。
みっちゃんは白玉を、浩太が赤玉をカゴから1つずつ取り出しては投げる。
白組は38点、紅組は41点、ただし白組のカゴに赤玉が3つ入っていたので減点し、紅組は38点。
「同点だねぇ」
「ちっ・・・次は負けねぇ」
「麗彪さん、ちってするの、だめでしょ」
「舌打ちなんてしたらあかんよなぁ?俺はそんなんせぇへんでぇ」
「綾ちゃん偉い!」
みっちゃんは、この運動会の勝敗が自分にどう影響するかわかってるんだろうか。
綾から告白されたと聞いたが・・・綾への態度は特に変わっていない様に見える。
返事はどうするつもりだ。
優しいみっちゃんは、はっきり断れるんだろうか。
それとも・・・まさか麗彪より綾の方がタイプだったり・・・。
・・・いや、そりゃないか。
みっちゃんにとって、麗彪は特別だ。
麗彪にとってみっちゃんがそうである様に。
紅組が勝ったら綾を潰して、麗彪から俺がみっちゃんを奪うつもりだが・・・みっちゃんの気持ちを考えるならやらねえ方がいいんだろうな。
まあ、1ヶ月くらい俺がみっちゃん囲って、愚息を反省させるくらいならいいか。
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