288 / 300

休憩

麗彪(よしとら)side】 勝敗とは別に、美月(みつき)にも競技を体験させてやる事になった。 まずは玉入れ。 (やなぎ)が支えるカゴに玉を入れさせてやったが、案の定届かない。 片桐(かたぎり)に肩車させ再度挑戦し、なんとか10玉中3玉がカゴへと入った。 残りは柳が嬉々として顔面で受け止めていたが・・・。 「美月ちゃん凄いやん!」 「さすがお嬢!」 「僕より上手ですね」 「ほら嬢ちゃん、わしが下ろしたる」 「五十嵐(いがらし)、それは俺の役目だ」 なんで堂本(どうもと)と五十嵐まで美月に懐いてんだよ。 俺の美月だっつってんだろ。 美月を片桐から下ろし、次の競技体験へ。 2人3脚だが、さすがに美月の細い足首に手錠なんて嵌められない。 そう思ったんだが・・・。 「ぼくも手錠でやりたい」 「みっちゃん・・・言うと思ったよ。だから、みっちゃんの手錠を使おうな」 ああ、あの誕プレに紛れてたふわふわ虎柄ファー付き手錠か。 で、もちろん俺と・・・。 「なぁなぁみーちゃん、あたしとやらん?」 「えっと、(こう)さんと?」 ・・・え? なんで紅と? 「まあ、紅ならみっちゃんとも身長が近えし、いいんじゃねえか?」 美月は142cm、紅は・・・160cmくらいか? 近いっちゃ近いが・・・。 「・・・ん?なんだ(すめらぎ)」 皇がそっと、俺にだけ見える様にメモを見せてきた。 声帯をやられて喋れないらしく、筆談もめったにしないって聞いてたんだが・・・。 メモには『紅と組ませて美月くんが男だってバレるとライバル増えて面倒です』と書いてある。 ・・・え、綾のやつ、紅たちに美月が男の子だって言ってないのか? 別にそれはどっちでもいいが、なら皇は何で知って・・・隣に座ってたから気付いたのか? まあ確かに、面倒(くせ)ぇ事になりかねねぇな。 ならやっぱ俺が・・・。 「ええ?なんですーちゃんとなん?あたしとやろぉや()うてんのにぃ」 「おい(てめぇ)、なにさり気なく美月と手錠で繋がってやがる・・・っ!」 結局、美月は皇と走っ・・・いや、ほぼ歩いてたな。 体育館半周くらい。 それにしても、皇まで美月を狙ってるとかじゃねぇだろうな? 俺の美月がモテ過ぎる・・・。 「ほら美月、手錠外そう」 「うん・・・ん?」 「ん?」 「・・・カギ」 「・・・まさか、ないの?」 「ぱぱぁっ」 親父が助けを求められ、ジャージのポケットを探った。 「・・・あれ?」 「おいまさか」 「なあんちゃって」 (あせ)らすんじゃねぇよ・・・。 俺と繋がってんならまだしも、皇と足首繋がってるとか我慢ならねぇんだよ。 無事、手錠を外したところで昼休憩を挟み、勝敗は後半戦へと持ち越された。

ともだちにシェアしよう!