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王子様と世界の中心

美月(みつき)side】 (あや)ちゃんたちが帰っちゃって、麗彪(よしとら)さんたちはお仕事。 麗彪さんと駿河(するが)さんと時任(ときとう)さんは、ぱぱといっしょに会合だって。 片桐(かたぎり)さんと新名(にいな)さんは別のお仕事で、カンナさんはそのお手伝い。 ぼくは、ぱぱのお家でお留守番。 (やなぎ)さんはぱぱに付いて行ったけど、藤堂(とうどう)さんと浩太(こうた)さんがいっしょにいてくれる。 「お嬢、なにしてんだ?」 「コイ見てるの」 「あー、それで犬どもに服の裾咥えられてんのか」 うん、ぼくが池に落ちないよおに、みんなスウェットの裾を咥えて後ろに引っ張るんだよね。 このスウェット、麗彪さんのなんだけどな。 桜鬼(おうき)はいつも通り、隣にお座りしてて、ぼくが前に行き過ぎると身体で止めてくれる。 スウェットを咥えてるのは、ドーベルマンの子たちで、ライオとエーレとアデル。 ロルフとリヒトの兄弟なんだよ。 あと、ブレンとミランとオリスもいるけど、楓鬼(ふうき)柃鬼(れいき)といっしょにお庭の見回りしてるみたい。 「鯉なんて見て面白いか?」 「きらきらして、綺麗だよ」 「キラキラしてんのが好きなのか?なら若に言えばなんでも買ってくれんじゃね?」 「きらきらしてるの?」 うーん・・・。 「これが1番好きだから、他のはいらないかな」 麗彪さんとお揃いの指輪。 光があたると、きらきら光る。 ぼくの宝もの。 「若とお揃い?」 「うんっ」 「お嬢ってさ・・・なんで若と付き合って・・・いや、結婚したんすか?」 「え?」 なんで・・・って、大好きだから。 ぼくにおいでって言って、手を引いて連れて来てくれたから、だよ。 痛くて、暗くて、寒くて、苦しいところから、助けてくれたんだ。 まるで、絵本で読んだ・・・。 「王子様だから」 「王子様ぁ?若が?魔王様の間違いでしょ」 「ふふっ」 魔王様でも(けだもの)でも、麗彪さんはぼくの王子様だもん。 優しくてカッコよくて、たまに可愛い。 「ぼくの王子様だよ。麗彪さんは、ぼくの世界の全て」 あのおうちから出て、外の世界が広い事を知って、いろんな人に会っていろんな物を見た。 それでも、やっぱり、ぼくの世界は麗彪さんといっしょだから存在してるって思う。 「へぇ・・・まあ、若にとっても、お嬢が世界の中心って感じだし・・・お似合いの夫婦っすね」 「えへへ」 「おい浩太、俺の嫁を口説いてんじゃねぇだろうなぁ?」 「ひぃ───っ!?」 あ、麗彪さん、帰って来た! いつの間にか、浩太さんの後ろに立ってる。 ・・・あれ、浩太さん、大丈夫? 「お帰りなさい、王子様」 「ただいま、俺のお姫様」 ぼくが両手を伸ばすのと同時に、麗彪さんがぼくを抱き上げる。 ぎゅーって、ぼくは、ぼくの世界の中心に抱き付いた。

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