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およう服とおるすばん

美月(みつき)side】 麗彪(よしとら)さんも、駿河(するが)さんも、時任(ときとう)さんも、おでかけしちゃった。 ぼくは、おるすばん。 ひとりでおるすばんは、おかあさんといた時も、よくしてた。 だから、だいじょおぶ。 「だいじょぶだよ、とらきち。麗彪さん、すぐ帰ってくるって言ってたもん」 とらきちがさみしくないよおに、ぎゅってだっこしてあげる。 麗彪さんがしてくれるみたいに。 麗彪さんのおよう服も、いっしょにぎゅってすると、麗彪さんのにおいがして・・・。 「・・・・・・麗彪さん・・・っ」 泣いちゃだめなのに・・・っ。 がまんしなきゃ、いい子にしなきゃ。 ぼくが泣くと、きっとまた、麗彪さんをこまらせちゃうから。 「泣いちゃだめだよ、とらきち・・・」 おかあさんが、おしごとでずっと帰ってこなかった時も、泣かなかったもん。 夜になっても、お部屋のでんきがつかなくて、まっくらのままでも、泣かなかったもん。 麗彪さんのおうちは、あかるくて、きれいで、あったかくて、おやつもあって、とらきちもいるもん。 「・・・麗彪さんの・・・およう服・・・」 麗彪さんがかしてくれた、さっきまで麗彪さんがきてた、およう服。 ちょっとだけ・・・きても、いいかな・・・。 麗彪さん、おこらない、かな・・・。 だめだったら、ちゃんと、ごめんなさいって言ったら、いいよって言ってくれる、かな・・・。 「・・・ゎ、おっきぃ・・・」 やっぱり、麗彪さんはぼくよりずっと大きい。 麗彪さんのおよう服に、すっぽり入ってると、麗彪さんにだっこしてもらってるかんじがする。 麗彪さんのおよう服をきて、とらきちをだっこして、麗彪さんのベッドに行く。 とらきちとベッドにねたら、あったかくて、麗彪さんのにおいがして、うれしいのに・・・。 「・・・っ、ょし・・・とらさん・・・っ、ぎゅって・・・してほし・・・っ」 麗彪さん、はやく帰ってきて・・・。 体のまん中くらいが、きゅーってする・・・。 いたくないのに、いたいかんじがする・・・。 がまんしてるのに、だめなのに、なみだが止まらなくなっちゃうよ・・・っ。 「・・・ぅ・・・、・・・ふぇ・・・っ」 とらきちに、ぎゅーってだきついて泣いてたら、ピロンピロンって音がした。 あ、けーたいの音だ! 麗彪さんが買ってくれたけーたいの音! 麗彪さんがでんわしてくれるとなる音だ!! 「は、はいっ!麗彪さん?」 『美月、大丈夫か?具合悪くなったりしてないか?今何してる?』 麗彪さんの声だ・・・っ。 だめ、泣いちゃだめっ! ちゃんと話さなきゃ。 「ぇと、だいじょぶですっ、ちゃんと、とらきちといっしょにいますっ」 『そうか。とらきちと、どこにいるんだ?』 「ぁ、の・・・麗彪さんの、ベッド・・・です・・・でも、ねるんじゃなくてっ、麗彪さんが帰ってくるの、ちゃんとおきてまってますっ」 『眠いなら寝ててもいいんだぞ?』 麗彪さん、ちょっとだけわらってるかんじがする。 麗彪さんの声、大好きだけど、今は麗彪さんのわらってるかお、見たい・・・。 「帰ってくるまで、まってる・・・」 『わかった。必ず最短で帰るから、待ってて』 「ぅん・・・っ」 でんわがおわったあと、けーたいでとった麗彪さんのしゃしんを見ながら、くつをぬぐとこの前にすわって、麗彪さんが帰ってくるのをずっとまってた。

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