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健全な寝室

麗彪(よしとら)side】 ベッドに寝かせ、さらさらの髪を撫でていると、素直に目を瞑り眠り始める美月(みつき)。 本当に寝ないで待ってたんだな・・・。 可哀想な事をしたという罪悪感が沸き上がったが、ふと思い出したある事実で吹き飛んだ。 「・・・俺のシャツ着て待ってるとか・・・マジかよ・・・」 耐えろ・・・耐えろ俺の自制心・・・! 美月、お前は俺をどうしたいんだ。 このままじゃ一線を越える日も近・・・。 「・・・いやダメだろそれは・・・」 美月は天使だ。 俺は裏社会の闇に染まった人間だが、天使に手を出す様なゲスではない。 ・・・が、自他共に認める美月専門の変態ではある。 「撮っとかねえと」 俺のシャツを着てすやすや眠る天使を撮影。 そして壁紙リストに追加。 こうしとけばランダムで待ち受けに表示される。 「どれも可愛過ぎて選べねえからな」 さてと、美月もちゃんと眠ったみたいだし、仕方ねえから仕事するか。 さっさと片付けて風呂に入って、美月のいるベッドに入る・・・。 「・・・去れ、煩悩」 ベッドに入っても一緒に寝るだけだ。 そう自分に言い聞かせながらリビングに戻り、駿河(するが)時任(ときとう)にあれやこれや言われながら仕事をした。 「麗彪さん、美月くんに寝室をつくってあげたらどうですか?(けだもの)と寝るよりずっと良く眠れるはずですよ」 誰が(けだもの)だ。 ちゃんと自制してるだろうが。 「窓から朝日が入る健全な寝室向けの部屋が倉庫になってる。2時間あれば片付くから、後はベッドを買ってきて・・・」 「なに勝手に美月の寝室つくろうとしてんだ時任。美月は俺のベッドで寝るんだよ」 つか朝日の入る健全な寝室って何だ。 俺の部屋は不健全かよ。 「自分のシャツを着てる美月くんを前にして、(けだもの)にならないと言い切れますか?」 「・・・・・・ならねえよ」 「今の間は何ですか?」 「うるせえ。終わった、風呂入る」 それにしても、このところの仕事は地味で他愛ないものばかりだ。 だから美月と一緒に過ごせるんだが。 言いたくないが、駿河・時任のお陰か。 あいつらは本当に良くやってくれる、感心する、イイ奴らだ・・・と思いながら風呂を出ると、ふたりが件の部屋を片付けていた。 ・・・無駄だぞ。 自室に戻り、美月が変わらず良く眠っているのを確かめてから、俺もベッドに入る。 最初は小さく丸まって寝ていた美月だが、俺が入ると俺にくっついて眠るようになった。 ・・・可愛い。 そっと抱き寄せ伝わってくる(ぬく)もりに、俺も安心して眠りに就いた。

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