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王子様になれなかった獣

麗彪(よしとら)side】 ・・・・・・・・・やり過ぎた。 「ごめん、美月(みつき)・・・」 心も身体も未発達な美月に、俺は何て事を。 しかも、かなりきつく抱き締めて。 痣にでもなってるんじゃないかと不安で仕方ない。 「どおして、あやまるの?」 「美月がいいって言ってないのに、キスしたから・・・」 俺は待てもできない・・・犬以下だ。 今はベッドに座った美月を前にし、床に正座して土下座一歩手前の姿勢で反省の意を表している。 「ぼく、したかったよ、麗彪さんと・・・ちかいのキス・・・」 ・・・誓いのキス。 そういやそんな事言ってたな。 お姫様になって、俺と結婚の誓いのキスがしたいって。 くそ、もっとそれらしいシチュエーションで優しくしてやれば良かった・・・! 「やっぱ俺は王子様じゃなかったな・・・あれじゃ本当に(けだもの)だ・・・」 「でも、麗彪さんだもん。ぼく、おうじさまとじゃなくて、麗彪さんと・・・キスしたかったんだもん・・・」 王子様じゃなくていいのか。 俺でいいのか。 俺は(けだもの)で、中学時代のあだ名が魔王陛下で、表の顔こそまともな仕事をしているが、実際は極道の若頭なんだぞ。 天使の美月に、我慢できず手を出したゲスなんだぞ・・・。 「本当に、俺に喰われてもいいのか」 「うん。麗彪さんに食べられたい」 即答かよ。 本当に喰っちまうぞ。 ・・・いや、俺の言ってる喰うと美月の言ってる食うはたぶん違う。 落ち着け俺。 「本当にがぶってされたら、痛いんだぞ」 「・・・麗彪さん、ぼくじゃ、だめ・・・?」 「美月がいい」 俺も即答かよ。 だが、美月の表情がぱあっと明るくなったので良しとする。 「美月くーん、ついでに麗彪さーん、朝ご飯ですよー」 タイミング良いんだか悪いんだか、駿河(するが)が呼びに来た。 朝飯か・・・そうだよな、まだ朝なんだよな。 やっぱここは不健全な寝室なのか・・・。 「ああ、今行く」 「はあい!あ、麗彪さん、食べたらまた車であそんでいい?」 「ああ」 その前に。 どうしても心配なので、美月に許可をもらい服を捲って身体に痣がないか確認した。 そこに様子を見に来た時任(ときとう)。 俺から美月を奪取していった。 誤解だ、とは言えなかった・・・。

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