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最優先
【麗彪 side】
昼飯を食ってから、表の仕事の会議に出る事になった。
美月 がまた、俺の着ているシャツが欲しいと言うので脱いで渡し、自分の服の上から重ね着るのを見て、今夜風呂上がりに俺のシャツだけ着せたらどうなるか想像して仕事どころじゃなくなりそうになった。
「麗彪さん、行きますよ。はい、これ着てくださいね、あとネクタイ」
駿河 よ、俺を蔑んだ目で見るのをやめろ。
いつも通り、時任 の運転で出社し、必要最低限の仕事をこなしてさっさと退社する。
今までならもっとちゃんと働いて行けと言う駿河・時任も、おやつまでに帰るという約束を守るために何も言わなかった。
そう、俺たちが最優先すべきは美月だ。
順調に帰路へ着き、予定より少し早くマンションへと向かっていた車内で、駿河がとんでもない事を言い出した。
「片桐 が・・・マンションに、いるそうです」
「はあっ!?」
片桐を信用していない訳じゃない。
だが、美月が独りでいるマンションに、俺以外の人間が居るのは許せない。
美月に万が一の事があったら・・・。
「時任、何人はねてもいい、急げ」
「言われなくても急いでます」
そうか、どおりでエンジンが唸ってるわけだ。
片桐め、わざわざマンションに何しに来たんだ・・・。
まあ、あいつは賢いしイイ年だし、命令されなきゃ子どもに手は出さないだろう。
だが顔が恐いからな・・・美月泣かせたら整形させてやる。
「美月!!」
急いで美月がいるであろうリビングへ向かった俺の目に、余りにも絶望的な景色が映った。
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